認知症の介護家族の約8割が「虐待」しそうになった経験が「ある」。調査データ発表

認知症の介護家族の約8割が「虐待」しそうになった経験が「ある」。調査結果データ発表

認知症の情報サイト【認知症ONLINE】を展開する株式会社ウェルクス(本社:東京都墨田区両国)は、認知症の家族を介護した経験をお持ちの方を対象に、介護中の「高齢者虐待」についての調査を実施しました。昨今、介護殺人や虐待の事件が増えている中で、実際にご家族の介護に携わる人たちのご意見を伺いました。

アンケート結果

問1.認知症のご家族を「虐待」をしそうになったことはありますか?

認知症のご家族を「虐待」をしそうになったことはありますか?
虐待をしそうになったことが「ある」が79.0%、「ない」が21.0%という回答でした。認知症のご家族の介護経験のあるご家族の大半が、介護する中で「虐待」を意識したことがあるという結果になりました。

問2.どんな「虐待」を意識しましたか?

問2.どんな「虐待」を意識しましたか?
虐待の種類としてトップに挙がったのは、脅しや侮辱、威圧的な態度といった心理的虐待(53.0%)。次いで、殴る・蹴るといった直接身体にダメージを与える身体的虐待が第二位(35.0%)、介護・世話の放棄といったネグレクトが第三位(30.0%)でした。直接的な暴力につながる内容よりも、精神的・間接的に相手を追い込む種類の虐待の方が意識されやすい傾向が見られます。

また、少数派ながら、縛る・監禁する等で外部との接触を遮断する身体拘束(14.0%)、自由にお金を使うことを制限する経済的虐待(7%)、懲罰的に下半身を裸にして放置する等の性的虐待(1.0%)も一定数見られました。

問3.どんな瞬間に「虐待してしまうかもしれない」と感じますか?

どんな瞬間に「虐待してしまうかもしれない」と感じますか?(複数回答可)
虐待を意識する瞬間で挙がったトップは、群を抜いて「言うことを聞いてくれない時」(45.0%)。次いで、「同じことを何度も繰り返し言われた時」(26.0%)、「夜寝てくれない時」(25.0%)、「暴言、暴力をふるわれた時」(25.0%)が僅差で続きます。

自由回答で寄せられたコメントの一部をご紹介します。

■ありもしないことで家族を疑って、「間違いない!」と決めつけて怒り出し、大声で怒鳴り出すことがあります。こうなるともうお手上げです。何を言っても、疑っているので通用しません。そんな時、いい加減にしろ!!何様やと思ってるんだ!!って怒鳴りつけてしまいそうになります。(50~54歳、女性)
■介護と仕事の両立で 苦しくなってしまった時(50~54歳、男性)
■義歯のつけ外し、口腔ケアで口を開けてくれない時(50~54歳、女性)
■自分の時間が取れないことがストレスに感じた時。自分の周りの人と自分の生活を比べてしまったとき。(30~34歳)
■病気のせいで、歩けないののに立ち上がり動こうとしてしまう為・・・ 2秒と目が離せず、どうしようもなくなって・・・ ベッドに腰ベルトで縛ろうかと思いました。結局、やりませんでしたが テレビは3台壊れ、ガラスも3枚、本人も顔から転んでケガをしました。(50~54歳)

介護者自身の心の余裕がなくなっていて、尚且つご本人との意思疎通がうまくできないことが重なると、「虐待」の思考につながりやすいと言えそうです。

問4.実際に虐待をしたことはありますか?

実際に虐待をしたことはありますか?
虐待を意識したことがある人のうち、実際に虐待をしたことが「ある」が51.0%、「ない」が34.0%。意識したことがあっても、現実の行動に移すのを思いとどまった方が半数以上にのぼりました。

問5.今後、虐待を防ぐために個人として大切だと思うことは何ですか?

問5今後、虐待を防ぐために個人として大切だと思うことは何ですか?
虐待を防ぐために個人として大切だと思うことトップは、「悩みや愚痴を言える場所があること」(78.0%)。次いで「認知症を理解すること」「周囲に頼ること」が70.0%で同率二位でした。

自由回答で寄せられたコメントの一部をご紹介します。

■距離を置くしか方法が思いつきません。(50~54歳 女性)
■愚痴をいうところではなく介助者の心のケアが必要。 ちょっと少しでも安心してあずけるところがあること。(45~49歳 女性)
■介護者に対する周囲の理解。特に、親族の無理解が精神的につらい。(50~54歳 女性)
■介護者を追い詰めないようにすること。介護職が家族だからやって当たり前になってしまったら介護者は追い詰められる。(45~49歳 女性)
■密接な介護になりすぎない事(45~49歳 女性)

日々の介護で溜まった疲れやストレスを緩和するための周囲の理解や相談窓口を多くの介護家族が求めていることがよく分かる結果です。介護に根を詰めすぎず、適度に本人との距離を保って接することが必要、という回答も目立ちました。

問6.今後、虐待を防ぐために国や自治体の政策として必要だと思うことは何ですか?

問6.今後、虐待を防ぐために国や自治体の政策として必要だと思うことは何ですか?(複数回答可)
「正しい認知症ケアの知識の啓蒙」「介護職員の環境、収入の確保」が68.0%で同率トップに、次いで、「地域の見守り体制の強化」が52.0%で二位となりました。どの項目も総じて多くの方が「必要」と回答しており、認知症を取り巻く社会環境全体を急ピッチで整備することが求められている結果となりました。

自由回答で寄せられたコメントの一部をご紹介します。

■特別養護老人ホームへ入り易くしてほしい。(40~44歳 女性)
■認知症介護経験のある方が、政策に携わること。(50~54歳女性)
■職場の理解(上っ面で無いもの)(45~49歳 男性)
■「長男の嫁が献身的に面倒を見るのが当たり前」と言う、地域に根付いている偏見を緩和する講習会や啓蒙活動が必要だと思う。「地域で見守る」「社会で見守る」のが当たり前と言う社会になるための、何らかの啓発が必要に感じる。(45~49歳 女性)
■現場の介護職の給料をかなり上げる事。やって行きたいのに、家族を養えないから…と辞めた人を何人も知っている。彼らの給料が上がれば解決方向に進む問題は結構あると思う。介護問題だけでなく。(55~59歳 女性)

まとめ

「虐待」を意識したことがある人が約8割――この数値は、たとえ大切な家族であっても、慣れないハードな介護生活と、孤立した状況が重なれば、追い込まれて介護虐待につながる可能性は決して少なくないことを示しています。

昨年1月、政府は認知症対策の国家戦略『新オレンジプラン』を策定し、「住み慣れた地域で暮らし続けることができる社会の実現を目指す」として在宅介護を更に推進していく方針を示しました。ただ、そうした政策の裏には、「介護殺人」や「虐待」等事件が後を絶たない現状があります。

現在、全国で認知症カフェの増設や、認知症の正しい知識の啓蒙が少しずつ進みつつはありますが、まだまだ在宅介護を担うご家族の負担軽減にはつながっていません。心に余裕をもって介護と向き合える環境づくりが、引き続き望まれています。

今回、アンケートにご回答頂いた皆様、貴重なご意見ありがとうございました。

【アンケート調査概要】
・調査期間:2016年1月13日(水)~1月15日(金)
・調査対象:認知症の親の介護経験を持つ全国20代~70代の男女100名(対象:認知症ONLINEの読者)
・年齡割合:20代 8%、30代 13%、40代 35%、50代 39%、60代 4%、70代 2%
・男女割合:女性80%・男性20%
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認知症ONLINE 編集部

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