「おむつを外そうとする」その意外な理由とは?

by 裵 鎬洙裵 鎬洙 18857views
オムツを外そうとする理由

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【かゆみのもとはお風呂にあった?!】

腰がかゆいらしくおむつを外そうとする人がいた。
説明しても、注意をしても、外して腰をかこうとする。

ある時、デイサービスの職員が
ボディソープを石鹸に変えてみたら
その日から腰をかくことは、ピタリとなくなった。

その人に影響するものに気づけることは、プロ冥利に尽きる。

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理由を探り続けたスタッフの姿勢に脱帽

 この話を聞いたときはうなりました。「おむつ外しをする」と聞けば、おむつかぶれをまずは疑ったり、皮膚の乾燥を疑ったりすることが多いのではないでしょうか。この人の場合は、おむつのムレや不快感が理由かも?と仮説をたて、おむつ→リハビリパンツ→布パンツへと排泄の自立へとケアを進めました。
 
 ところが、布パンツになっても腰をかく行為がなくなりません。医師からも、皮膚にトラブルはないと言われていたので、「なぜだろう?」と首を傾げていました。
 
 ある日、デイサービスのスタッフが「もしかして原因はボディソープかも?」と思い、石鹸に変えてみたら、その日から、腰をかく行為がピタリとなくなったのです。思えば、確かに皮膚に刺激を与えるものは、直接触れるおむつや、衣類だけじゃないですよね。これぞまさに、理由を探り続けているスタッフだからこそたどり着ける境地。気づきそうで、気づかなかった理由だったので、まさに脱帽でした。

人の行動に影響する「環境的要因」

 でも、考えてみると、ボディソープは確かに皮膚に刺激になるものですから、「そんなこと、意外でも何でもないじゃない」という人もいると思います。皮膚に刺激になるものとしてみれば、他にも下着の生地、おむつのムレ、塗り薬なども考えられます。
 
 これらは、人を取り巻く環境ですから、「環境的要因」といいます。「環境的要因」は、今回のように直接的に身体に触れるものだけでなく、五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)によって影響を受けるものを含みます。

つくったおかずを食べなかった理由

 ヘルパーがつくって冷蔵庫に入れておいたおかずを、それまでは食べていたのに、ある時期から食べなくなったことがありました。食欲が落ちたのかというと、並べたら完食するので、どうやら食欲の問題でもありません。味付けが気に入らないのだとしたら、そもそもこれまでも食べなかったでしょうから、味付けやメニューの問題でもなさそうです。そうなると、ついつい「認知症が進んで、わからなくなったんだ」と捉えがちですが、そのように捉えてしまえば、もはや理由を探ることなど不可能です。
 
 登録ヘルパーから報告を受けたサービス提供責任者は、利用者が冷蔵庫の中のものを、どのように取り扱っているか、情報収集を始めました。毎日入るヘルパーに聞き取りをしたり、自分でも利用者宅に伺って、観察をしました。そうすると発見したのです。
 
 その利用者は、以前は冷蔵庫内の棚、上段・中段・下段のそれぞれの棚の品物や食材を使っていましたが、いまは中段の棚のみ使って、上段・下段の棚には目線が向いていないというのです。そこで、つくったおかずを中段に置くようにしたところ、また食べるようになったのでした。

「必ず理由がある」と信じて疑わない

 徐々に視野が狭くなってきたのかもしれませんが、いずれにしても、その時点で利用者は「冷蔵庫の中段の棚にあればわかる」という力があったということです。その力の変化を「認知症が進んだ」の一言で片づけてしまっていたとしたら・・・。理由に気づけて本当に良かったと思った瞬間でした。

 「なんだろう?わからないなぁ」と思った時には、人の行動は必ず理由があると信じて、探り続ける姿勢を崩さないことです。ボディソープの件も気づくまでには半年以上かかりました。理由を探し出すのに時間がかかることもありますが、探り続ける姿勢があれば、ふとした瞬間に、手がかりを見つけられます。
 
 わたしは、そういう人が身近に増えれば、「認知症があっても安心できる」のではないかと信じています。

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裵 鎬洙
アプロクリエイト代表 認知症介護コーチ&講師 コミュニケーショントレーニングネットワーク講師 介護支援専門員実務研修講師 介護支援専門員専門研修講師 介護職員初任者研修講師 【略歴】  関西学院大学卒業後、訪問入浴介護サービスを手がける民間会社に入社。その 後、居宅介護支援事業所、地域包括支援センターなどで相談業務に従事。コミュ ニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にてコーチング/コミュニケー ションのトレーニングに参加し、専門職のあり方が利用者にどれほど影響するか を実感。  現場での臨機応変な対応につながるコミュニケーションセンスやケアの観点を 一人でも多くの人に届けるべく、研修・セッション・執筆等を行っている。介護 福祉士・介護支援専門員・主任介護支援専門員。
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