「歌う」ことは心と身体のリハビリテーション!【音楽で認知症予防】

歌うことは心身のリハビリテーション

ご高齢者や認知症が進んだかたにも楽しんでいただけるコンサート「音楽の花束」を主催しています、GOTOです。歌うことは高齢者にとって身近な楽しみです。そればかりではなく、歌うことは身体機能を高める効果もあることが分かってきています。今回は、音楽の力が与える心と身体への効果について、考えてみたいと思います。

重度のアルツハイマー病の方も、馴染みのある曲は口ずさむ不思議

グリーフケア、という言葉をご存知でしょうか。大切な人を亡くし、大きな悲嘆(グリーフ)に襲われている人に対するサポートするケアのことです。このグリーフケアにも、音楽は重要なツールであることは今や定説になっています。

音楽療法士の佐藤由美子さんの著書「ラストソング」では、病床にあったり、人生の終焉をむかえつつあるお年寄りに、1対1で、ギターやハープなど相手の方や場面に合わせた楽器を使って、対話をするかのように音楽を用いています。また、認知症への働きかけという意味では

(脳が)アルツハイマー病のダメージを受けていても、馴染みのある音楽を認識する部分は、比較的、その影響を受けていない。その結果、患者さんはほかの事を忘れても、馴染みのある曲を覚えている
全米認定音楽療法士 中村紀子さんのHPより引用、Jacobsen, Stelzer, Fritz, Chetelat, Joie & Turnerによる研究論文の要約

という研究がなされています。これについては音楽療法士だけでなく介護者、家族のかたが日常の中でもおおいに活用できると思います。

「歌う」ことは楽しい口腔ケア

一方、まだまだ元気な高齢者が「歌う」というと、まず思い浮かぶのは「カラオケ」です。現代の高齢者施設には、カラオケのレンタル機が置かれるところがよく見られるようになりました。デイサービスでも、お楽しみのお出かけコースとしてカラオケボックスが人気です。録音された伴奏で、マイクを使って歌うカラオケは賑やかで爽快、楽しいものです。

カラオケで歌う行為について、脳機能の活性化、ストレス軽減、唾液分泌を促しドライマウスを防ぐなど、健康寿命を伸ばす効果が研究されています。このうち高齢者のドライマウス予防を含めた口腔ケアについて、訪問歯科の武蔵野わかば歯科院長、星野真さんが高齢者住宅新聞に以下のような文章を書かれています。

認知症予防につながる生活習慣の改善には、口腔の機能がそれだけ健康な状態に保たれているかということがとても重要な鍵。(中略)『よく食べられる口』『よく話ができる口』であり続けることが、認知症を予防し進行を遅らせる上で重要になってきます」(連載「教えて!訪問歯科」より抜粋)

口腔ケアの方法については、日本訪問歯科協会のHPにも「咀嚼や嚥下のためのリハビリとともに発声や発語訓練が効果的」ということが具体的な発声の仕方とともに書かれています(「口腔ケアについて」より抜粋)。介護の現場でこうしたリハビリを導入している場面もよく拝見しますが、顔の筋肉をおおいに使って歌うことも同じく効果的であると言われています。

オトノハ 2

「腹式呼吸」は内臓を鍛えるレクリエーションになる

「音楽の花束」では健康体操のインストラクターとともに顔筋をほぐしたりおなかから呼吸をする体操と歌を楽しむ活動を開発しました。適度な運動とともに楽しく歌うことで「気分がすっきりします」「声を出して一緒に歌うのは楽しい」という声が聞かれました。
どのようなジャンルでも、プロの歌い手は顔の筋肉を駆使してよい声を出す工夫をしています。

また歌うためには独特の、おなかを使って深く呼吸をする「腹式呼吸」を用いますが、これも内蔵の刺激になり姿勢の改善にもつながり、健康寿命を伸ばすためにはぴったりのレクリエーションと言えます。たとえば介護付有料老人ホーム「アズハイム中浦和」では、定期的にソプラノ歌手による「音楽の花束」ミニコンサートを開催しています。馴染み深い唱歌や、日本歌曲、ドイツリート、オペラのアリアなどリクエストをいただきながらお好きな歌を本格的な歌唱で楽しみ、それから歌い手のレクチャーによる発声練習を行います。思いっきり声を出して歌手と一緒に歌うことで、充実感と達成感が生まれるとご好評をいただいています。

クラシックの声楽家だけでなく、長唄の唄方や民謡歌手とともにしっかりとした発声で歌うプログラムは「音楽の花束」の特色のひとつで、ピアノなど生演奏の伴奏で歌うこともその魅力のひとつです。録音された演奏と違って、速度や音の高さなどを自由に変えられるため、より歌いやすくなることも大きなポイントです。

アズハイム 歌

音楽の本質は「徹底して楽しむこと」

「歌うこと」の効果をさまざまに研究することはとても大切ですし、「こういう効果があるから歌を歌いましょう」ということは介護の現場では特に大きな影響を持つでしょう。しかし音楽の本質は「徹底して楽しむこと」だとGOTOは思っています。
その場にいる人の気持ちや背景を察しながら、その心に響く音楽を作り出すために、演奏のプロ、そしてファシリテーションのプロとしての技術が必要だと考えています。
人として生きる喜びにつながる音楽、それが「音楽の花束」が目指すものです。

GOTOの高齢者向けコンサートの模索は、まだまだ続きます。
このあともどうぞお付き合いくださいませ。

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後藤 京子(GOTO)
「音楽の花束」代表。星美学園短期大学講師。東京音楽大学卒、同大学第2副科オルガン専攻修了、邦楽演奏コース長唄三味線専攻修了。1986年日本ピアノコンクール全国大会第3位、受賞記念演奏会出演、1987年読売新人演奏会出演。NHK邦楽技能者育成会に学ぶ。短大西洋音楽史講師、小学校音楽科教諭を経て2004年より「音楽の花束」のプロデュース活動を始める。2015年きらめき認知症シスター(きらめき認知症トレーナー協会認定)取得。カトリック東京カテドラル関口教会オルガニスト。デイサービス「空の花 高井戸」取締役副社長。>>公式サイトへのリンクはこちら「音楽の花束」
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