認知症看護認定看護師の市村です。今年もよろしくお願いいたします。今回は認知症をもつ方への睡眠を中心とした生活リズムへの援助について考えていきたいと思います。
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認知機能が侵されると脳の変化によってサーカディアンリズム(24時間周期の体内リズムのこと。概日リズムとも呼ばれます)が乱れてしまうため、睡眠障害がおこりやすくなります。睡眠障害は介護施設などでも悩まされるケアのひとつですが、在宅介護においても介護ストレスの大きな要因になります。
介護現場での睡眠へのケアは「寝かせる」ことが重視されている印象があります。しかし、それは正しいケアなのでしょうか?また現場では人間本来の生理的なメカニズムへのケアが不足しているような印象を受けます。今回は、人間の身体が本来持つ生理的なメカニズムをふまえた昼間のケアのコツを5つご紹介します。
1.朝日を浴びる
基本的なことですが朝日を浴びることはサーカディアンリズム(概日リズム)を整えるためにとても大切です。睡眠・覚醒リズムは脳の松果体(しょうかたい)とよばれる部位から分泌される睡眠ホルモンであるメラトニンと脳の視床下部にある視交叉上核(しこうさじょうかく)の体内時計によって調整されています。
目から光が入ることでメラトニンの分泌が止まり、目覚めてから14~16時間後にまた分泌され自然な眠気がおこります。この生理的なメカニズムをしっかりと活用するために、だた「起こす」のではなく目から光を入れることを意識した援助を行ってみましょう。
2.「起きている」と「座っている」は違う
「夜眠れるように昼間起こしておきましょう」というのはよく言われていることです。筆者が勤務していた認知症病棟でも「昼間はデールームで過ごしてもらう」ということを基本にしていましたし、介護施設でもよくみられる風景です。
しかし実際は、椅子に座ったまま眠っている方も多くいらっしゃいました。椅子に座ったまま眠ることは逆に疲労につながる場合もあります。ただ椅子に座らせているだけでは生活リズムを整えるケアとは残念ながらいえません。「健康的に適度に疲れる」ためにできるその人に合った援助を考えていく必要があります。
3.昼寝を効果的に活用する
昼間の眠気が強い場合は昼寝も効果的です。どうしても「夜に眠れなくなるのでは」と心配になってしまいますが、午後の眠気を我慢させて半分寝て半分起きているような中途半端な状態を続けて無駄に疲れさせるよりは、30分程度の昼寝をしていただいたほうがよいでしょう。
眠気を一度とることでその後の覚醒度がよくなり活動もあがります。昼寝は15時頃までにするのがポイントです。以前「眠るのにも体力が必要」と聞いたことがあります。昼寝で体力を回復させることも睡眠には大切なのかもしれませんね。
4.午後のコーヒーや緑茶に注意する
筆者が勤務していたデイサービスでは、15時におやつと共にお好みの飲み物を提供していたのですが、コーヒーは大人気でした。睡眠に支障がない方はいいのですが、睡眠に悩みのある方は午後のカフェインには注意が必要です。意外に知られていないのですがカフェインの持続時間は8時間~14時間とも言われています。
コーヒーだけでなく緑茶もカフェインが多く含まれているので睡眠の質を考えると夕方以降は控えたほうがよいかもしれません。カフェインの影響が考えられる場合はほうじ茶やココアなどに切り替えてみるといいかもしれません。
5.睡眠時間にこだわらない
病院や介護施設では消灯時間が21時、起床は6時というところが多いのではないでしょうか。時間の睡眠時間ということになります。しかし健康的な高齢者でも加齢によって睡眠時間が短くなるのがわかっていますので、この時間全て寝てもらおうというのはナンセンスですよね。まして無理やり9時間寝かせるために睡眠薬を使うなんていうのは認知症ケアとは言えませんね。
睡眠時間が5時間であっても、その方の日常生活に大きな問題がないのであれば気にする必要はないと筆者は考えます。もしケアを提供する側に「○時間寝なくてはいけない」という固定概念があるとするならば、一度その価値観を捨てて「その人にとっての適切な睡眠」に目をむけてみてはいかがでしょうか。
まとめ
いかがでしたでしょうか。最初にも述べましたが現場では「寝かせる」ことに重きが置かれていますが、「睡眠は昼間どのように過ごすか」が実は大切なポイントなのです。今回は昼間の過ごし方を中心にお伝えしましたので、次回は夜の過ごし方についてお伝えしたいと思います。
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