認知症を「ニンチ」と略す慣習に終止符を!

by カイゴロウカイゴロウ 44369views
認知症を「ニンチ」と略す慣習に終止符を

前回記事(「拒否」という言葉をやめませんか)に続いて、介護現場で感じた違和感のある言葉シリーズです。認知症のことを、「ニンチ」と略す人に出会ったことはありますか?

「あの人ニンチがあるから」
「最近ニンチが入ってきてる」
「ニンチが進んじゃった」

等々、私がこの言葉を最初に聞いたのは、介護業界に入ってすぐのこと。あれから6年、未だに「ニンチ」と略すことには強い違和感を感じます。今回は、この「ニンチ」という言葉を考えてみます。

「認知」の本来の意味

認知(ニンチ)の本来の意味を調べてみます。

にん‐ち【認知】
・ある事柄をはっきりと認めること。「反省すべき点を―する」
・心理学で、知識を得る働き、すなわち知覚・記憶・推論・問題解決などの知的活動を総称する。
(参考:goo辞書)

上記からも、俗に言う「ニンチが進む」という言葉は、本来「認知機能が向上した」と読み解くことはできても、「認知機能が衰えた」という解釈はできないはずです。にも関わらず、「ニンチ」という言葉を未だに耳にする機会は多いです。

なぜ介護職員は「ニンチ」と略したがるのか

認知症を「ニンチ」と略している人の多くは、介護職員、いわゆる介護のプロです。新人、ベテラン、年齡男女問わず、使う人は使っている印象です。なぜ、彼らが「ニンチ」と略すのか、私なりに考えてみました。

略す方が専門用語っぽい?
昨今、介護に限らず、あらゆる言葉が略されていますね。「空気が読めない」ことを「KY」と言ったり、「なるべく早く」を「なる早」と言ったり。略す背景には、仲間内でしか通じない言葉を使う時に生まれる、ある種の“快感”が無意識に含まれているように感じます。

「認知症」よりも、「ニンチ」の方が専門用語のようで、こなれた感じが出るのかもしれません。無論、「認知症」はれっきとした医療用語なのですが…。

短くなって使いやすい?
文字数をカウントすると、「にんちしょう(6文字)」よりも「にんち(3文字)」の方が確かにシンプルです。しかしこの差は言葉にして0.01秒程度。大差ありません。「認知症」が発語しにくい単語でもないですし、これも納得出来ません。
「認知症」を“はばかる”気持ちがある?
「認知症」自体に差別を持っているため、言葉にすることにためらいがあり、婉曲表現として「ニンチ」を使う、という仮説です。差別しているかどうかを自覚している人は案外少ないので、これはあるかもしれません。
特に何も考えずに使っている?
最も多いケースがこれだと思います。先輩が使っているから使う、職場の共通言語になっている…いわゆる「慣習」ですね。実際、「ニンチ」と言う同僚に指摘した時に「みんな普通に使っているのに、今更なぜそんなことを言うのか」と不思議顔をされたことがあります。

「ニンチ」と略してはいけない理由

既に色んなところで、色んな人が、「認知症=ニンチ」と略すことへの違和感を唱えています。それぞれ主張されていますが、私が略すのに反対している理由は、

言われて傷つく人がいるから

これに尽きます。

今年8月、みんなの介護で行われた調査でも、
認知症の方、そのご家族の方に質問です。病名を「ニンチ」と略され不快に思ったことはありますか?
というアンケートに対して、「ニンチ」と言われたことがある780人中、過半数を占める77%(606人)が「不快に思ったことがある」と答えています。

理由は、「ニンチ」という言葉に

  • 「差別的なニュアンス」を感じる
  • バカにされていると思う
  • 隠語っぽいと感じる

という意見が多く挙がっていました。言った方にそのつもりが全くなかったとしても、受け手が傷つくのであれば、使用を控えるべきだと思います。

私個人として、利用者さんやご家族から職員の言葉遣いを直接指摘されたことはありません。ただ、職員に気を遣って言えないものの、「内心傷ついている」人は多いのではないでしょうか。

ただの「言葉狩り」ではない

「呼称よりも大事なのは中身」
「単なる言葉狩りだ」
「介護職がますます働きづらくなる」

という意見もありますが、私は反対です。

今、認知症当事者によるワーキンググループが発足したり、NHKで認知症キャンペーンが大々的に組まれていたり、世の中の流れが変わり始めていますが、誰よりも認知症の人達をみている介護職員こそが、認知症をよく理解して、根強くある世の中の偏見をなくす先頭に立たないといけないと感じます。

認知機能は、その人らしさを形づくる大切なものだということ。言葉がもたらす影響は、私達が想像するよりも大きいこと。もっと、肝に命じるべきです。

もし、あなたの周りに、普段から「ニンチ」と略語を使う介護職員がいたら、この問題について一度議論してみてください。

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カイゴロウ

カイゴロウ

介護福祉士/介護支援専門員/認知症ケア専門士。39歳、宮崎県生まれ。認知症グループホーム、デイサービスでの勤務を経て、ユニット型の特別養護老人ホームでで働く介護福祉士です。趣味のサーフィン。休みの日は大抵海にいます。
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