「しゃくじいの庭」で発見!『住み慣れた地域で最期まで』が叶う小規模多機能の魅力

しゃくじいの庭様写真_七草粥作り

「小規模多機能型居宅介護」をご存知ですか?通い・泊まり・訪問を組み合わせることで、お年寄りが24時間安心しながら自宅で暮らせるサポートを行う介護サービスです。2006年4月に制度化されて以来、全国に増えているものの、まだまだ知らない人も多いのではないでしょうか。

2015年6月にオープンした「しゃくじいの庭」もそうした小規模多機能型居宅介護事業所のひとつ。認知症のお年寄りが暮らすグループホームも一緒に併設されているタイプの事業所です。今回は、しゃくじいの庭を訪ね、小規模多機能型居宅介護事業所だからこそできる介護について、インタビューしてきました!

★今回お話を伺った方

安井英人さまプロフィール写真
●安井 英人(やすい ひでと)さん

「しゃくじいの庭」統括責任者。1968年生まれ、札幌育ち。大学卒業後、開発コンサルタントとして16年間勤務。途上国における政府開発援助(ODA)、国内各地のまちづくりに携わる。「アドバイザーではなく、当事者としてコミュニティ・ビジネスに関わりたい」という思いから、国際教育NPOワールドキャンパスインターナショナルを仲間と設立。被災地支援の中で感じたことをきっかけに、2011年に介護事業を手掛ける有限会社アオキトゥーワンへ入社。異業種出身ならではの視点で、介護事業を運営している。

アオキトゥーワン 公式サイト

いつもスタッフの顔ぶれが変わらない、という強み

――まず、「小規模多機能型居宅介護サービス」について、初めて耳にする方向けに、簡単に役割を教えていただけますか?

小規模多機能型居宅介護は、簡単に言えば、色々な種類の介護が自宅近くの一箇所で受けられる、というサービスです。住み慣れた家に住みながら、通うこともできるし、泊まることもできる。訪問介護を受けることもできます。通常は別々に行われているものですが、小規模多機能では全て同じ事業所で行うので、いつでも顔なじみのスタッフが情報を共有しながらサービスにあたる、というのが最大のポイントです。自宅と家族がもう一つ増えた、というイメージが近いかもしれません。

――「しゃくじいの庭」さんでは、グループホームも併設されていると伺いました。

はい、「しゃくじいの庭」では、1階が小規模多機能、2階がグループホームになっています。小規模多機能とグループホームが一緒にあることの意義を最大限発揮したいと考えています。例えば、最初は小規模多機能をご利用いただいて、在宅介護が難しくなってきたら、グループホームへご入居いただく。さらに、その後また小規模多機能に戻って頂き、ご自宅への訪問でお看取りを支える、などということも可能です。入居前も入居後も同じ場所で、同じスタッフに囲まれて過ごせます。特に、環境の変化に弱い認知症のお年寄りにとっては望ましいあり方だと考えています。

それと、うちのグループホームは定員9名だけなのですが、そこに小規模多機能が加わることで、人との交流が生まれます。普段は2階で過ごしていて、お茶をする時には1階にいく等、自由な行き来ができるので、風通しが良いんです。

「庭」が新しい地域のつながりを生む

――「しゃくじいの庭」さんでは、その名の通り、入口の前にあるお庭が特徴的ですね。どんな狙いがあるのでしょうか?

しゃくじいの庭は、「いつまでも住み慣れた場所で暮らしたい」という地域の皆さんの想いを叶える場所です。なので、私たちは地域との交流をとても大切にしています。というより、運営上の柱と捉えています。新しい地域交流が生まれたり、人同士の絆を深めるきっかけをつくる“装置”となることを期待して作ったのが、この庭です。だから、庭には柵もありませんし、ドアの鍵もいつも開けっ放しです。

しゃくじいの庭 ガーデン
年間を通じて旬の花や野菜が育ちます!

――たくさんの木やお花が植えられていますね。

はい。びわ、ブルーベリー、オリーブ等、長く収獲が楽しめるものをいくつか。他にも旬の野菜や花を都度植えています。

また、この庭の設計から維持管理、活用プログラムなど、地域のNPO等の協力を頂いており、この庭を活かして、ガーデニングの基礎が学べる講座や、干し柿づくりなどのワークショップ、練馬野菜のマルシェ、自慢のカレーを皆に振る舞う「カレーライスの日」等、定期的に地域イベントを開催しています。そうすると、介護に特段関わりのないご近所の奥様や子どもたちも覗きにきてくれるんですよね。

しゃくじいの庭 カレーの日の様子
「カレーライスの日」など、庭や多目的室などを地域に開いています。

――お庭という場所で、地域との交流が自然に生まれるのですね。

そうですね。すると、普段小規模多機能やグループホームを利用しているお年寄りとのつながりも生まれるんです。例えば、庭の活動に参加していたら、隣で土を触っているのが認知症のおばあちゃんだった…というような。「介護」や「認知症」を身近に感じていただくことで、「何かあったらここに相談してみよう」という信頼関係も芽生えます。

行政の“介護相談会”などに相談しにくる人って限られると思いますが、常に開かれた庭があることで、「そういえばうちの奥さんの調子が最近変なんだけど…」「介護ってどれ位お金がかかるの?」といった何気ない質問をいただくようになってきています。

「自主性尊重」と「ほったらかし介護」は紙一重

――普段の介護で大事にされているのは、どんなことですか?

しゃくじいの庭では、普通のお家みたいに過ごしてほしいと考えています。なので、毎日決まったレクリエーションの時間割のようなものはご用意していません。食事と入浴、健康チェック以外は、好きなことをして過ごしていただいています。けれど中には、そのままだと一日中ボ~ッと過ごしてしまう方もいます。適度な刺激は、やっぱり大切です。

――適度な刺激、というと?

しゃくじいの庭では、コミュニティ活動や研修講座等の場所として地域の方に“多目的室”を使って頂くことで、活動の場を共有するようにしているんです。例えば、ウクレレ教室。練習の後、利用者さん向けに腕前を披露して交流してもらえれば、それも日中のプログラムになります。

その他、地域の方向けの園芸教室や、学生さんなども含めた勉強会等も開催されるのですが、活動後にはお年寄り達と一緒にお茶を飲んでおしゃべりをして帰ってもらいます。どんどん、活動のバラエティも増えていきます。特別なレクリエーションがなくても、地域の皆さんの力を借りれば、我々の暮らしと同じような自然な日常の中で社会性を維持するのに十分な刺激が得られると思います。

しゃくじいの庭 利用者のひ孫さんによるギター演奏会
ある時は、利用者さんのひ孫さんがギターを持ち込んで演奏会に。

「いつかまたお家に帰れる」環境を

――最近、ご家族の介護疲れからくる虐待や殺人といった事件を色んなところで耳にしますね。この現状について、どう思われますか?

ご家族だけでの介護は、本当に大変です。特に外を出歩いてしまったり、攻撃的になるような強い周辺症状がでる場合、その時期にご家族だけで面倒をみるのはなかなか難しいと思います。数日で終わるなら耐えられるかもしれませんが、普通は数か月から数年間継続して想像を絶する負担になります。

現状だと、介護に疲弊して、ギリギリの状態ではじめて施設を探すご家族が多いのですが、もっと前の段階から多様なサービスがあることを知って頂きたいと思いますね。

――いちばんご家族が辛い時期を施設で預かる、と。

そうです。本来、「できるだけ自宅で看たい」と考えているご家族は多くいます。ただ、介護疲れが限界に達すると、「もう自宅は無理!」→「施設に預けたらゴール」という思考に切り替わってしまいがちです。そうなる前に、一般のデイ+訪問の居宅プランと施設入所の間にある、小規模多機能のようなサービスを活用することで、ご家族の気持ちにもっと余裕が生まれると思います。

認知症も、後期になると体力も落ち、ご本人の想定外の行動に介護者が振り回されて苦しむ…ということは少なくなります。それより前の介護が一番辛い時期は各種介護サービスを組み換えながら使い、必要なら施設に入って、でも、最終的には自宅に戻って看取る、という流れもあり得ることがもっと認知されるべきだと思います。

しゃくじいの庭 食事の風景
家族の一員のように、利用者さんの日常に寄り添います。

――症状が変化しても、最期まで同じスタッフ体制で寄り添えるというのは、小規模多機能型ならではですね。

はい、私たちスタッフとご家族がチームを組むようにしてご本人ととことん向き合えるのは小規模多機能の強みだと思います。ご本人がいるところならどこでも(自宅でも事業所でも)、症状がどんどん進んでいっても、いつも同じ顔ぶれで長く関わっていけるということで、ご本人の安心感も、ご家族との信頼関係も強くなるんですね。

私たちは、「住み慣れた地域で暮らし続けたい」といった普通の願いに寄り添い続けたいと思っています。そのために、周辺の事業者や行政だけでなく、地域組織や各種NPOなどとも連携を強めて、情報を日常的に発信し、気軽に相談に乗れるような場面を作っていきます。そうすることで、介護を中心にした安心なコミュニティづくりも実現できると考えています。

しゃくじいの庭
風と人の通りみち。しゃくじいの庭の挑戦は、今後も続きます!
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認知症ONLINE 編集部

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