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【“間(ま)”で示す思いやり】
「あなたは話したいことを話しているんでしょうけれど、
もうちょっとゆっくりしゃべってはもらえませんかね?
考えている間に次々にしゃべられては
もう混乱してしまって、わけがわからなくなるんです」
この思いが伝えられないとしたら
歯がゆいよね、きっと。
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わたしたちのコミュニケーション力を鈍らせるワナ
「あの人に話が伝わらないのは、認知症のせいだ」そう感じたことはありませんか?でも、考えてみてください。
年齢を重ねると周りの情報をキャッチする力が衰えてきます。視力も衰えるし、視野も狭くなる。白内障になれば見えにくさも重なります。聴力も衰えると、テンポの速い会話にはついていけないし、一度に多くのことを話されると理解するのに時間がかかったりします。
話が通じないのは、こちらの話し方に原因があるのかもしれない。その可能性を考慮できれば、コミュニケーションも変わってきます。「聞き返される=認知症だから伝わらない」ととらえていると、イライラするかもしれませんが、「聞き返される=聞こえにくさがある」「聞き返される=表現(言葉)がわかりにくい」ととらえれば、声のボリュームをあげる、言い換えるなどの工夫をするでしょう。「認知症だから」という理由ほど、わたしたち自身のコミュニケーション力を鈍らせるキーワードはありません。
ご本人が「心ここにあらず」状態になっていないか
今回コラムに書いたことは、とあるケアマネジャーとご本人が会話する様子をみていて
感じとったことでした。そのケアマネジャーは、サービスを調整した過去のやりとりや、サービスを利用することでどういう暮らしになるかという将来の展望を、丁寧に説明されていました。しかし、ご本人に「サービスを使わない」と言わせないかのごとく、切れ目なく説明し続けていました。
そばでその様子をみていたら、説明を聞いているご本人の意識はどこかに行ってしまっていて、「心ここにあらず」状態になっていたのです。
その時の様子を、ご本人の目線で想像してみたら、
- 説明が複雑で途中からついていけない
- 聞かれたことの返事を考えている間に、次々と質問されるのでついていけない
- こちらがついていけていないことに、気づいてくれない
という様子がうかがえたので、これはもう歯がゆいだろうなと感じ、途中で会話の橋渡しを行いました。
会話に「間(ま)」を取り入れよう
- 説明は短く端的に。
- 句点「。」の後は理解する「間」を。
- 質問をしたら考える「間」を。
- 返事が返ってきたら復唱して確認し、その確認をしたときも「間」を。
この「間」は、「あなたのペースを尊重しますよ」という意思表示です。「間」があることで、人はしっかりと考えることができるし、相手が伝えていることへの理解が深まります。自分の正直な気持ちに気づけるようになるし、相手を信頼できる人として感じるようになります。
ご自身の体験と照らし合わせてみてください。矢継ぎ早に、ポンポンと会話を進められて、言いたいことも言えずに、なんだかスッキリしなかったという体験って、ありませんか? 「間」は、認知症かどうかとは関係なく、人が相手を信頼して、心を開く上で大切なコミュニケーションの一つなのです。
じっくり観察してみると、会話上手な人や、面接が上手な人は、この「間」の取り方が絶妙なので、ご本人が本当の気持ちを話してくれたり、こちらの考えに耳を傾けてくれたりするなど、良好なコミュニケーションへとつながっています。まずは一度、「間」を意識したコミュニケーションを試してみましょう。


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