「認知症の利用者からの暴力に介護職は耐えるしかないのですか?」

by なっちゃんなっちゃん 56753views
認知症の利用者からの暴力に介護職は耐えないといけないの?

前回、介護施設での利用者への虐待について書きました。(前回記事:虐待事件の報道の裏に隠れた介護現場の闇)沢山の反響をいただく中で、「介護職も利用者から日常的に暴力を受けている」「私たちはやられっぱなしなのか」という声もありました。今回は、『介護職が利用者から受ける暴力』について、私自身の体験とともに考えます。

認知症の利用者が凶暴化する理由

まずは、この写真をみてください。

認知症の利用者Aさんから受けた傷

これは、デイサービスでの入浴介助の際、女性の利用者Aさんが暴れてできた傷です。どうしてAさんがここまで凶暴化してしまったのでしょうか。

当時、派遣の介護職として働く私は、「人が足りないので」と単発で入浴介助に入りました。職員いわく、どんな状況でも入浴させないと家族さんからクレームが来るとのこと。「毎回Aさんと格闘している」というので、どんなものかと私が見た光景は、ひどいものでした。

  • 声掛けをしない
  • いきなり複数の人数で襲い掛かるように周りで囲む
  • 半ば無理やり上から下から服を脱がす

認知症で認知機能が衰えると、ただでさえ視界が狭くなり、不安を感じやすい状態です。毎回こうした介助なのであれば、Aさんが抵抗するのは当たり前だと感じました。上の傷は、Aさんが抵抗して車椅子から落ちそうになった時、かばった私の体に触れてできたもの。もし、普段からAさんと信頼関係を築き、不安を取り除くことができていれば、このような状態にはならなかったのでは、と思います。

引っ掻く、叩く、噛みつき…暴力はSOSのサイン

こちらは、別の日にBさんを介助した時にできた傷です。このBさんの介助の場面でも、

認知症の利用者Bさんから受けた傷

  • 介護スタッフがBさんと目を合わせない
  • 黙っていきなり身体を触る
  • Bさんの前で「この人ニンチやから」と聞こえるように話す

といった状況で、Bさんは苦痛でたまらないといった感じでした。Bさんは、入所前に、自宅で虐待や拘束を受けていました。“触られること=怖いこと”というトラウマがあり、精神疾患も患っていました。私が介助に入る時にも、つねられることはありました。「助けて」「やめて」の抵抗は、暴力でしか表せなかったのです。それでも根気よく毎回、ゆっくり声掛けすることを続けていると、次第につねられる回数は減っていきました。

介護職員は我慢するしかないのか?

いえ、我慢する必要はありません。もし身の危険を感じたら、その場を離れてください。

私たち介護職員は、ボランティアではなく、賃金をもらって働く介護のプロです。「暴力があった」事実を受け止め、職員、他種職、ご家族と話し合いをすればいいのです。なぜ暴力という形になるのか、知恵を絞って次の行動に繋げればいいのです。

その人の認知症や他の病気の状態を医師や看護師から聞き、元々の性格を家族に聞く。その上で、普段の介護の様子を観察すれば、どんな状況の時に苦痛を感じるのかある程度の予測はつきます。

これだけで厳しければ、一時的に薬を服用するのも一つの方法だと思います。できるだけ薬には頼りたくないですが、医師に相談した上で正しく使えば、本人の苦痛を緩和できることもあります。

さいごに

上記に書いたことはあくまでも個人的な体験をもとにした個人的な意見です。すべての介護職員が同じように考えるのは難しいかもしれません。

それでも私は、自分の体にできた傷を見るといつも思う事があります。それは、「この人たちは私に何を伝えたいのだろうか」ということ。人を傷つけることを喜んでする人などいないと思います。感情をうまく伝えられないことを、私たち介護スタッフが理解していることが、この問題と向き合う上で、本当に大切だと思います。

一番最悪なのは、介護者が一人で解決しようと抱え込んで潰れてしまうこと。悩んだら、上司や同僚に相談してください。信頼できる身内の人にも話してみてください。ここに綴ったことを、普段の介護の場面で、少しでも思い出してもらえると嬉しいです。

The following two tabs change content below.
なっちゃん

なっちゃん

1978年生まれ。高校を卒業後、病院の看護助手から始まり、現在は老人保健施設の認知症フロアを担当。休日には癒しを頂きにタッチセラピーのボランティア活動を行っています。保有資格は、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)、介護職員基礎研修、介護福祉士、福祉用具専門相談員。
介護のお仕事

Facebookコメント