手術で治る認知症「特発性正常圧水頭症」の症状、治療法

突発性正常圧水頭症

根本的な治療方法がない、といわれる認知症ですが、原因疾患によっては、治るものもあります。その代表例が、手術によって治療できる「特発性正常圧水頭症」。認知症と診断された方全体の5~10%、または全国約30万人が当てはまると言われていいます。最近、「治るタイプの認知症」として少しずつ知られてきていますが、まだまだ認知度が低いのが現状です。ここでは、特発性正常圧水頭症(とくはつせいせいじょうすいとうしょう)の特徴、症状、治療法について解説します。

特発性正常圧水頭症とは脳内に水が溜まる病気

特発性正常圧水頭症は、脳の中に「髄液(ずいえき)」と呼ばれる水が異常に溜まることで脳室が拡大して起こる病気です。

髄液は、無色透明な液体。1日に4~5回入れ替わり、いつも新鮮な状態で脳内を流れています。通常、毎日約500mlほど脳室でつくられる髄液は、脳内で循環し、頭頂部で吸収されます。この髄液が、何らかの原因で必要以上に溜まってしまう病気が「水頭症」です。

水頭症は、髄液の流れが悪く脳圧が高くなるタイプと、髄液の停滞や吸収に問題があるものの脳圧は高くならないタイプの2種類あります。このうち、脳圧が高くならない方が「特発性正常圧水頭症」です。

未だ、髄液に異常をきたす原因は不明で、病気そのものの認知度が低いため、有効な治療を受けられている人は少ないのが現状です。

特発性正常圧水頭症の症状

特発性正常圧水頭症の代表的な症状は、次の3つです。

1.歩行障害

特発性正常圧水頭症の最も特徴的なサインで、一番最初に表れやすい症状です。

  • 歩幅が狭くなって小刻みに歩く
  • 足を擦るように歩く
  • ふらふらと不安定な歩行
  • 第一歩が歩き出せない、等

症状が進行すると、立つ姿勢や座る姿勢を保つことが難しくなります。

2.認知機能の低下

  • 新しいことが覚えられなくなる(記銘力の低下)
  • 注意力や集中力がなくなる
  • 思考や作業のスピードが遅くなる
  • ものごとに消極的になる、等

アルツハイマー型認知症と較べて、認知機能の低下は軽い傾向にあります。

3.尿失禁

  • トイレが近くなる(頻尿)
  • 尿が溜まっている切迫感を感じながら我慢できなくなり尿を漏らす、等

3つの特徴の中で一番遅く表れることが多いようです。

特発性正常圧水頭症の進行スピードはゆるやかで、少しずつ悪化します。歩行障害も、認知症の症状も、「年齡のせい」と思われて、放置されることもしばしばあります。自発性が無くなり、元気がなくなると、老人性のうつ病と誤診されることもあります。

特発性正常圧水頭症の診断方法

CTMRI
脳神経外科神経内科で受診するのが一般的です。ただ、CTやMRIなどの画像検査設備が揃った総合病院であれば、もの忘れ外来等でも診察することが可能です。診察前に、特発性正常圧水頭症の診断が可能かどうか、医療機関に問合せてみると良いでしょう。

検査は、CTやMRIといった画像検査で、脳室が大きくなっていないか確認されます。ただ、脳室が大きくなる現象は、アルツハイマー型認知症でも見られることもあり、画像検査のみでは正確な診断は困難な場合があります。

そこで行われるのが、「髄液タップテスト」(腰椎から髄液を少し抜いてみて、症状が改善するかどうかを試す検査)です。髄液の採取後、2~3日で歩行などの動きが改善した方は「水頭症」と診断され、手術のステップに進みます

特発性正常圧水頭症の手術

シャント

特発性正常圧水頭症の治療は、外科手術で行うのが一般的です。手術の多くは、シャントと呼ばれるチューブを使って行われます。手術の種類は、大きく分けて次の3種類です。

脳室・腹腔シャント

拡大した脳室にシャントを挿し、脳室にたまった髄液をお腹の中(腹腔内)で吸収する方式。頭部、腹部とシャントの通り道に数ヶ所の傷ができます。日本では、この方式の手術が一番多く行われています。

腰椎・腹腔シャント

頭には傷をつけず、腰の部分にある腰椎くも膜下腔にチューブを挿し、たまった髄液をお腹の中(腹腔内)で吸収する方式。術後に腰痛や足のしびれといった症状が表れる可能性があり、限られた水頭症にしか行われません。

脳室・心房シャント

脳室からのチューブを、心臓にある右心房に挿し、髄液を逃す方式。腹部の病気を合併している人など、脳室・腹腔シャントが困難な事情がある場合に行われます。心臓に負担がかかるので、特殊な場合を除いてあまり行われません。

手術の結果、歩行障害は90%改善する

歩く

上記の手術の結果、歩行障害は、2ヶ月で90%の方が改善、1年で95%の方が改善されるといわれます。また、認知症の症状や、尿失禁も、個人差はありますが、30~80%の確率で改善されるようです。手術直後より徐々に改善される傾向にあるので、術後すぐに改善が見られない場合も、あきらめず見守りましょう。

ただ、アルツハイマー型認知症も併発している場合、手術をしても、認知障害は基本的に残ります。その場合でも、歩行障害がなくなれば、本人の自主的な活動の幅は広がります。

手術にはタイムリミットあり。見逃さないことが大切!

時計
手術によって治療可能な特発性正常圧水頭症ですが、手術は脳のダメージが少ないうちに進める必要があります。手術に最適な期間を過ぎてしまうと、手術自体が出来なくなったり、手術の効果が十分得られない場合があります。そのため、早期診断がとても大切です。

ただ、前述の通り、特発性正常圧水頭症はまだまだ認知度が低く、精密検査が行われるまで病気に気づかないケースも少なくありません。歩行障害や尿失禁は、特発性正常圧水頭症を見極める上で大きなサインです。「年のせい」と安易に判断せず、異変に気付いたら、専門医に受診しましょう。

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認知症ONLINE 編集部

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