物忘れとは違う!記憶障害の3つの特徴を知ろう

認知症の記憶障害の特徴

「もしかして認知症?」と疑うきっかけになりやすい物忘れ。ですが、認知症の「記憶障害」と加齢による「物忘れ」は全く別物です。認知症の症状は記憶障害と呼ばれ、脳内の認知機能の低下によって引き起こされるもの。今回は、認知症と物忘れの違い、そして認知症における記憶障害で表れやすい3つの特徴をご紹介します。

認知症と物忘れ、どう違う?

年齡を重ねるにつれて、人や物の名前が思い出せなくなったり、忘れっぽくなるのは誰しも経験すること。しかし、「認知症の記憶障害」と「加齢による物忘れ」は全く別物です。このふたつは、一見するとよく似ているため混同されやすいのです。まずは両者の違いを知っておきましょう。

種別 物忘れ 認知症
原因 加齢による脳細胞の機能低下 脳細胞の死滅により脳が萎縮する
記憶 体験したことの一部を忘れる
(きっかけがあれば思い出せる)
体験した事実自体を忘れる
(完全に記憶が抜けている)
具体例 昨日の夜ごはんのメニューを思い出せない 昨日の夜ごはんを食べたかどうか思い出せない
生活への支障 とくに支障なし 支障あり
進行性 進行しない 進行する
自覚症状 物忘れの自覚あり 物忘れの自覚なし
身体機能への影響 記憶力は低下 記憶力の低下とともに、判断力や時間間隔も低下

1.記銘力の障害:数分前の出来事を忘れる

過去のことを覚えていること「記憶力」といいますが、直近のことを覚えていることを「記銘力」といいます。記憶障害が始まると、まずこの記銘力が衰えます。

数秒前や数分前の記憶がなくなるので、短い期間に、何度も同じことを繰り返します。「ゴミ出しの日はいつだっけ?」と言った5分後に、「ゴミ出しの日はいつだっけ?」とまた尋ねます。本人は質問をしたこと自体忘れてしまっているため、毎回初めて聞くつもりで質問しています。また、自分が物を置いた場所を忘れてしまうのも短期記憶の障害のひとつです。

接し方の注意ポイント

初期の場合、周囲の人は「さっきも同じことを言っていたでしょう」と指摘してしまいがちです。しかし、本人にとっては指摘されたことのよる不安感ばかり残って、指摘された内容は忘れてしまうので、気持ちの混乱につながります。また、絶対にやってはいけないのは、本人に向けて怒ったり、無視をすること。こうした対応は、本人にとって強いストレスになり、そのストレスで症状が悪化してしまいます。

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2.エピソード記憶の喪失:体験そのものを忘れる

「きのうの晩ごはん、何食べたっけ?」を夕食をとったことは覚えていても、具体的なメニューを思い出せないという経験は誰にでもあることです。しかし、認知症の場合、夕食をとったという体験自体を忘れてしまうことが多くあります。これが、「エピソード記憶」の喪失と呼ばれる特徴です。

ごはんを食べてすぐに「ご飯はまだ?」「今日はまだ何も食べていない」と言ったりするのは、このエピソード記憶が失われたことが理由です。食べたものを部分的に忘れるのではなく、食事をとった体験そのものを忘れていきます。

接し方の注意ポイント

ここでも、「さっき食べたでしょ」と訂正したり、怒りの感情をぶつけるのは逆効果です。本人の言動を笑顔でいったん受け止めて、安心してもらうことが対応の第一歩となります。

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3.記憶の逆行性喪失:記憶が過去にタイムスリップする

記憶障害の場合、これまで歩んできた人生の記憶を、現在から過去に遡って忘れていく、という特徴があります。これを、記憶の逆行性喪失といいます。例えば、長年連れ添ってきた妻に対して「どちらさまですか?」と尋ねる場合。夫は、現在の妻の顔を忘れていることが考えられます。ただこうした場合でも、若い頃の妻の写真を見せた途端「私の妻だ」とはっきり言うケースはしばしばあります。これは、自身にとっての「今」が、若い頃までタイムスリップしているためです。「自分の妻は20代だ」と思っているので、実際にそばにいる80代の妻が、妻だと思えなくなるのです。

ほかにも、記憶の逆行性喪失の例は色々あります。

  • 結婚後の苗字で呼んでも反応しないが、旧姓で呼ぶと返事をする
  • 退職して何十年も経つのに、身支度をして会社に行こうとする
  • 夕方になるとそわそわして、以前住んでいた家に帰ろうとする
  • 50代の娘を小学生だと思い込み、おもちゃで遊ぼうとする
  • 数年前に他界した夫が生きているように振る舞う

接し方の注意ポイント

「もう90歳でしょ」等、実際の年齡を自覚させようとすると、混乱を招くのでNGです。できるだけ認知症の人が今、生きている時代、世界を知り、その世界を受け入れることが大切です。「どんな仕事をしていたの?」「学生時代の話を聞かせて」等、過去の話を引き出す質問をしてみることで、その人がどの位過去まで遡っているのか、探ってみると良いでしょう。

対応の鉄則は、否定しない、怒らない。

多くの場合、記憶障害があることを、本人は自覚していません。記憶障害で抜け落ちてしまった記憶は、本人にとっては存在しないことと同じです。大切なのは、短い期間に同じことを繰り返し言ったり、現実とは違うことを言ったりした時に、まわりの人が否定せず、怒らず、何でもないことのように振る舞うこと。そうした対応が、本人の安心につながり、安定した暮らしにつながります。

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認知症ONLINE 編集部

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