認知症ケア×多職種連携|どう埋める?介護と医療の深い溝

医療 介護 対立

はじめまして。認知症ケアに特化した介護サービス「のばな」を運営している有限会社野花ヘルスプロモートの冨田昌秀です。みなさんは“多職種連携”という言葉をご存知ですか?介護現場にいる方なら、一度は聞いたことがありますよね。この多職種連携を簡単にいうと、医療職と介護職がチームを組んで、介護に向き合っていきましょう、というもの。これからの認知症ケアを語る上で欠かせない考え方です。しかし、その具体的な中身はまだまだ知られていないのが現状。今回は、認知症ケアにおける多職種連携がなぜ大事なのか、私たち介護者は何をすればいいのか、考えてみたいと思います。

そもそも、多職種連携ってなに?

では、今回のテーマである多職種連携とは何でしょうか?
多職種連携とは、狭義においては複数の職種の方が連携し、ある患者のために協力して治療やケアにあたっていくことを指しています。

認知症の方一人へのケアには、様々な職種の人が関わります。医師、看護師、介護職員、ケアマネ―ジャー、行政職、地域のボランティア…それぞれ、異なる専門知識や役割を持ちながら、向き合っているのは同じ人。だったら、個人プレイではなくチームで、治療やケア方針などをみんなで話し合って支えましょう!というのが、多職種連携の基本的な考え方です。

多職種連携 医療 介護

近年、急速に多職種連携が進んでいます。それは、連携することの大切さが徐々に認識されてきたこと、カルテをはじめとしたデータの電子化の設備が整ってきたこと、そして、今後のマイナンバー化によって個人の情報が一元管理されることを見越し、医療・介護界が動いていることなどが理由に挙げられます。私の運営する「のばな」も、介護と医療の融合と地域社会との連携を目指す一員です。

現実は上手くいかない?多職種連携の課題

多職種連携の必要性と重要性は、専門職間でも当然理解されています。しかし、現状はどうでしょうか?実際に現場にいると、色んなネガティブな意見も聞こえてきます

介護サイドからの声

  • 医療機関に連絡しても、忙しいので電話連絡さえつながらない
  • 医師や看護師から威圧的に怒られる 
  • 例えば、「何も知らないのね?」、「あなた病気の何を知っているの?」等
  • 威圧的な雰囲気で質問がしにくい
  • 医師と話すことに対して敷居が高い
     

    医療サイドからの声

    • 認知症について勉強不足だ
    • 話の要旨が得ず時間がかかる
    • 聞きたい情報が得られない
    • 利用者の生活イメージがつかめない
    • 利用者が「できないこと」だけでなく「できること」も知りたい

     などと、それぞれの立場からよく耳に聞きます。

    埋まらない医療職と介護職の溝

    平成26年3月の地域包括ケア研究会において発表された抜粋によると

    ◆介護職は「医療的マインド」を持って、具体的な生活場面のアセスメントの内容を医療側に伝達する

    ◆医療側は「生活を支える視点」を持って、介護側から提供された生活情報をもとに病態を把握、臨床経過の予測を介護側に伝え、必要となる介護やリハビリテーション等の介入を見通す

    とあります。個人的に読み解くと、それぞれの立場において「そうあってほしい」姿勢と具体的方法が明記されています。

    介護職は医療的マインドが足らないんです。だから持ってほしいんです。でも、マインドって何でしょう?正直、私自身も医療的マインドとは何か、うまく説明できません。このマインドが定義されないままでは、具体的にどう振る舞えばいいのか分からない、というのが実情です。

    一方、医療側に足らないとされるのは、生活を支える視点。お互いの求めているものが、お互いに伝わっていない現状がある限り、今後も医療職と介護職の溝は埋まらないでしょう。

    介護職のスキル不足、医師の介入不足

    利用者さんのケアプランを決めるのに関係者が集う「サービス担当者会議」。その際、よくあるシーンを紹介します。

    Aさん娘
    Aさんの娘
    最近うちの母、物忘れがひどいんです・・・
    ケアマネ
    ケアマネ
    なるほど。Aさんには物忘れがあるのですね。
    Aさん娘
    火の始末が怖いので、食事を作りにきてもらえませんか?
    ケアマネ
    分かりました!では、ヘルパーさんを紹介しますね。
    Aさん娘2
    ありがとうございます!助かりました!

    一見スムーズな会話のように見えて、このケアプランの決め方には大いに問題があります。みなさんは、どこに問題があるか気付きましたか?

    問題1:Aさんの「できること」が分からない

    「火の始末が怖いからヘルパーに来てほしい」という望みは、あくまで家族側の希望です。実際、認知症のAさんは、料理全般ができない重度の状態かもしれませんし、調理は問題なくできるけれどたまに火を消し忘れるくらいの軽い症状かもしれません。この会話からは、実態が分からないのです。こうした“アセスメント不足”によって、次のような問題が起きます。

    • 医師にAさんの具体的な記憶障害が伝わらない
    • Aさんの出来ることまで奪ってしまう
    • 出来ることを奪われた結果、Aさんの症状が悪化する
    • 結果的にAさんに“何もできない人”のイメージが作られる

    この場合、医療側は、「Aさんの残存機能をきちんと把握してね」なんてことを考えています。Aさんの生活障害の程度がきちんと分かれば、治療によって適切な「自立支援」ができるからです。ケアマネジャーが安易にヘルパーを紹介することで、Aさんの「調理がしたいという想い」をむやみに取り上げている。そのことに気づかない関係者は多くいます。

    問題2:医師が担当者会議に出席していない

    サービス担当者会議では、ケアマネジャーが中心となって、利用者さんのご家族、看護師、介護士、介護施設側の担当者、福祉用具相談員、などを一同に集め、現状と今後の課題を話し合う機会です。しかし、医師がサービス担当者会議への出席することは、ほとんどありません。

    実際、医師が足りていない今の日本の現状では、個々のサービス担当者会議に医師が毎回足を運ぶのは、非現実的です。しかし、関係者が一同に会し、チーム全員で同じ方向に進むことが出来る機会に参加できないのは、多職種連携においては致命的です。

    介護職と医療職が歩み寄るにはどうしたらいい?

    では、それぞれどうすればもっと多職種連携に近づけるのか、私の持論は次の通りです。

    まず、介護の専門職に必要なこと。

    • 利用者の「できないこと」ばかりに着目しない
    • 「できること」や「本人の希望や思い」に目を向ける
    • 「医学的なことを聞かれても分からない」と諦めるのではなく、学ぶ姿勢をもつ
    • 怖気づくことなく医療側に要望伝える(医師も情報を欲しがっていることを知る)

    次に、医療者に必要なこと。

    • 患者の治療と同様に、生活障害の改善を見据える
    • 介護職の言葉に生活課題のヒントがある事を知る
    • 医師が介護職から情報を得るために必要な内容を提示する
    • 医師と介護職の共通言語を提案する

    そして、医療と介護の連携に最も必要なのは、医療側も介護側が一緒に検討できる「機会」を増やすこと。医師がサービス担当者会議に参加できなくても、実用的な情報共有シートの作成など、方法はあります。

    基本的なことですが、今一度、利用者において最大の利益を本気で考えてみてください。治療なのか、リハビリなのか、予防なのか、補完的ケアなのか。違う職種の人たちと一緒に考えてみてください。そして、自身の専門職種としてなにができるのか考えてみてください。それぞれがパズルの一つのピースであって、一つもかけることなく完成させることが良質な連携だと思います。

    本コラムをお読みいただくにあたって

    ここまでお読みいただきありがとうございます。私は、認知症ケアを語る際は「いまだもって、仮説に基づいた見解」のうえに成り立つものだと考えています。どうかその点、配慮いただいたうえで読み進めていただければ幸いです。現場でも認知症を患う方やそのご家族から日々様々のことを教わり、積み重ねて現在の思考へとなっております。それは明日以降も変わっていくもの進化するもだとご理解ください。

    口癖のように話すことがあるのですが「あり方とやり方」を区別することは大切です。変えてはいけない心の真にある信念を守るために変えなければいけない手段があります。今後も、日々の業務を振り返ることで「あり方」を基準に評価し、ご利用者さんにとっての『最大の利益のために』もっと良い「やり方」に試みる姿勢を大切にしていきたいと考えています。

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    冨田 昌秀

    冨田 昌秀

    看護師・介護支援専門員/認知症介護実践リーダー・認知症ケア専門士/ストレスチェック実践者・見え検ファシリテーター。第二次ベビーブームに生まれた万博を知らない45歳看護師です。頸部食道がんを患い、在宅での死を選択した父の影響で医介連携を強く意識し、「認知症に特化した訪問看護ステーション」を開設。多職種連携の必要性を発信し続ける。「地域で安心して生活がしたい」という「思い」を叶えるため、地域の繋がり構築に日々取り組んでいます。◆在宅認知症ケアに特化した介護サービス「のばな」公式サイト
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