親の認知症介護、どう向き合う?40代ケアラーの本音座談会

40代ケアラー座談会

働き盛りの40代。親の介護問題について、まだ具体的にイメージしていない人も多いかもしれません。しかし、年間10万人とも言われる介護離職者のうち、30~40代が占める割合は約3割。いつ始まってもおかしくない親の介護に備えるのに、40代は一つの節目です。今回は、認知症を持つ親の介護を現在進行形で行っている、40代の介護家族3名に、在宅介護でぶつかった壁や、その乗り越え方などについて、本音で話していただきました!

【座談会参加者・プロフィール】

くどひろ プロフィール★くどひろ
43歳。ピック病とアルツハイマー型認知症を持つ母を遠距離介護中。2013年3月に介護退職し、現在も東京と実家を年間20往復中。『ひとりで抱えず、人に頼る。情報発信し、同じ境遇の人をラクに!』をモットーに、しれっと介護中。ブログ「40歳からの遠距離介護」を運営。著書「医者には書けない!認知症介護を後悔しないための54の心得(廣済堂出版)」(認知症ONLINE連載コラム)

えふ プロフィール★えふ
41歳。レビー小体型認知症と思われる父を母とともに実家で介護中。平日は会社員として仕事をして週末実家に通う。実家での介護生活の時間の有効活用しながら、現在の仕事を継続しつつできる福祉関係の勉強を模索中。最近の楽しみはYouTubeで見るケアの方法を週末父で試すこと(認知症ONLINE連載コラム)

なな プロフィール★なな
44歳。アルツハイマー型認知症を思われる母と在宅介護中。平日はフルタイムで働くワーキングケアラー。「親の介護は誰にでも起こりうる。だから、もっと多くの人に関心を持ってほしい。親が認知症になったって人生終わりじゃない。貴重な人生経験。」との想いから、ブログ「親が認知症になったら、どうする?」をゆるーく運営中。(認知症ONLINE連載コラム)

親の介護は、ある日突然やってくる

――みなさんは当時30代後半や40代になったばかり…という若い時期に介護に直面されましたね。介護に直面した当時の状況はどんな感じでしたか?

くどひろ プロフィール
祖母が子宮頸がんで入院が決まった時、母の異変に気づきました。仕事中に母から電話があるんですが、取れないと10件連続で留守電が入っていて、これはやばいぞ、と。2回目の介護離職という事もあって、慌てるというよりも「ついに来たか…!」と思いましたね。

なな プロフィール
うちの場合、物盗られ妄想から始まりました。「お金がないから数千円ちょうだい」から始まって、「私の財布盗ったでしょ?返してよ!」と日に日にエスカレートして…。それまで30代の独身生活を満喫していて、認知症のことも介護のことも全然頭になかったので、ただただ衝撃と混乱でした。

えふ プロフィール
私も、突然の父の変化は本当に驚きました。元々記憶力はピカイチで、毎日脳をフル回転して仕事をしていた人だったので。かかりつけ医に診せても、「あんなに思考のはっきりした人が認知症のはずがない」と言われました。得体のしれない現実への恐怖心と、どうしていいか分からない戸惑いと、「もう逃れられない」という気持ちとがごちゃまぜになった複雑な気持ちでしたね。

えふさん対談中

認知症の辛さは十人十色。比べるのは無理

――手探りの介護が始まって、一番苦労されたことは何ですか?

えふ プロフィール
なんだろう、当時は全部辛かったな…。でも敢えて一番を挙げるなら、ちゃんと診てもらえる病院に巡り合えなかったことですかね。最初、父は初期のアルツハイマー型認知症と診断されて、アリセプトを処方されました。それから突然スイッチが入ったみたいに激しく怒り出したり、身体が棒みたいに硬直して動かなくなって、2ヶ月もしないうちに寝たきり状態に。結局、それが薬の副作用だったのかどうかは分からないんですが、医師に相談しても「病院に来ても、何もできることはない」と言われて、凄くショックでした。時間が経った今は落ち着いていますが、当時は父の症状がいつ悪化するかいつも怯えていて、家中がピリピリしていました。

くどひろ プロフィール
それは辛かったですね…。自分の場合は逆に、母について苦労らしい苦労はなかったかもしれないです。ちょうど母の認知症が分かった時期と、祖母が余命半年と言い渡された時期が被ってしまったのは焦りましたが。疲れている時に何度も同じことをくり返して聞いてきたり、ちょっと勘弁してくれよと思うことはありましたが、「辛い」という感覚とは違うかも。

なな プロフィール
私は初期の物盗られ妄想が一番辛かった。それまで仲の良い親子で、お互いに信頼し合っていると思っていた母から、泥棒扱いされるというのが何とも耐え難くて…。当時は“物盗られ妄想”という言葉すら知らない状態でしたし。あれから3年以上経って、物理的な介護の負担は今の方が大きいですが、精神的には今の方が全然ラクです。

くどひろ プロフィール
うちの母も物盗られ妄想はあったんですが、犯人候補は親戚とか、自分以外の人でした。だから、平常心を保てたのかも。こうして聞いてみると、それぞれの症状も辛いポイントも全く違いますね。

えふ プロフィール
本当ですね。認知症って一括りにされがちですけど、他の人の例を聞いていると、その症状や状況に画一的なものはないな、と改めて感じます。

親の介護の辛さは共有しづらい

――当時、同世代で介護を背負う立場の人はまわりに少なかったと思います。誰に相談していましたか?

えふ プロフィール
確かに私と同じ年代の子で介護中っていうのはほとんどいなかったですね。でも周囲の友達や同僚に「相談する」って気持ちはなかったな。だって介護の辛さって経験した人にしか分からないですし、同じ介護中の人でも症状が全然違う。私が相談される立場だったら困りますもん。当時よく遊んでいた友人達には、「前みたいには頻繁には会えなくなるけど、これからもよろしくね」ってことを伝えたくて、父の状況も簡単に伝えましたが。

なな プロフィール
私も周りにはほとんど話さなかったなぁ。「最近付き合い悪くなったね、よかったら話きくよ」と言ってくれた友達もいましたけど、「話したところで介護の悩みは共有できないし、言われたほうもどう反応したらいいか困るだろうな」と思っていました。周りに期待していたのは、共感とかアドバイスじゃなくて、ただ普通に接してほしいということ。「今までと同じように付き合えないのは、介護をしているからなんだな」って普通に受け入れてほしいという思いは今もありますね。

くどひろ プロフィール
自分も周りには言っていませんね。必要最低限、仕事で関わりがある人には話しましたが、それも事務的なものでした。僕の場合、ネットや本をたくさん読み漁って自分の悩みに答えてくれる情報を探しました。その結果、今のかかりけ医との出会うこともできて、結局自分で動いたのが良かったと思います。

介護者の心の安定に欠かせない「医師選び」の基準

えふ プロフィール
医師との出会い!我が家が難航したポイントです。くどひろさんは早々に良いお医者さんが見つかったんですか?

くどひろ プロフィール
いえいえ、うちも難航しましたよ。最初はネームバリューを信じて大きな病院で診てもらったりもしたんですが、そもそも担当医と診察室でほんの1分位しか話せないし、話せても「私は薬を出すことくらいしかできない」と言われたり、信頼できる医師と巡りあうのは難しいなぁとつくづく思いました。

なな プロフィール
分かります!私も今のかかりつけ医と出会うまでは色んな病院にかかりました。本人の前で「あなた認知症ね」と言い放たれたり、診察の態度がとにかく偉そうで…。そうした医師にあたると、母もますます病院に行きたがらないし、医者選びは本当に悩ましいですよね。医師個人の人間性が本当に大事だなぁと思います。

えふ プロフィール
でも、人間性だけだと厳しいとも思います。うちの父を最初に診てくれた先生はいわゆるクリニックの医師で、父のことを本当に大事に考えてくれるいい先生だったんですが、認知症の理解が乏しくて、ダメでした。反対に専門性を求めて精神科のある病院で受診しても、こちらが「アルツハイマーじゃなくて、レビーじゃないですか?」と言った途端、すごく面倒臭そうな対応をされたんですけどね。

くどひろ プロフィール
プライドが高い医師は多いっていいますもんね。一度自分が下した診断を患者家族から言われて覆すのは抵抗があるんだと思います。その点、うちのかかりつけ医は良い意味でプライドがないんですよ。(笑)イチ患者家族の私の言うこともきちんと耳を傾けてくれる。この傾聴力があるかないかで、家族が救われるかどうか変わってくるんですよね。

えふ プロフィール
そうですね。結局、今たどり着いたのは、レビーを診ることができる精神内科系のクリニック。完璧に期待通りの医師ではないけれど、最低限通院はできています。それよりも、今は訪問看護の方が親身にお世話になってます。看護師さんの対応が素晴らしくて、父が元々先生だったのを考慮して「先生」と呼んでくれたり、普通に世間話をしてくれる。父も看護師さんが来るのを楽しみにしているみたいです。

何かあった時にはあの人に相談しよう、と思える専門家がいるだけで、自分の心持ちが全然違いますよね。

ななさん 対談中

メディアは「認知症」の恐怖を煽り過ぎ!

――介護が日常になってみて、気づくことはありますか?

えふ プロフィール
父とテレビを見ているとき、「認知症」という言葉が出てくるとチャンネルを変えるんです。父は認知症であることの自覚があるんですね。母から聞いたところ、認知症で万引きしてしまう、という話が取り上げられている番組を見た父が、自分もいつか万引きしてしまうんではないかと怯えていたそうで。認知症の絶望感を煽るネガティブキャンペーンは、本当に勘弁してほしいです。

くどひろ プロフィール
そうそう。認知症を必死で予防しよう!と呼びかける番組もよく見ますけど、認知症の潜伏期間は20~25年前から始まると言われてます。本当はもっと若い層が認知症番組を見るべきなんですが、実際意識して見るのはシニア世代だけなんですよね。

なな プロフィール
よく見る「認知症になりやすい人」のチェックリストも、全然あてにならないなー!って思います。内向的で几帳面な人がなりやすいそうですが、うちの母は社交的でおおらか。そんな簡単にパターン化なんてできないですよ。

えふ プロフィール
観覧者なのか効果音なのか、「え~!」「大変~!」と他人事みたいなりアクションも気に障りますね…。認知症には多様性があること、誰でもなり得ること、もしなったとしても色々な対応方法があること。そんなことを、深刻になりすぎずに伝えてくれる番組があるといいな、と思います。

くどひろ プロフィール
そうですね。最近では佐藤雅彦さんや丹野智文さん、樋口直美さんなど、認知症を持つ当事者の立場で情報発信される方も増えていて、そこはすごく希望があるな、と思います。

対談中 くどひろさん

これから介護に向き合う40代に伝えたいこと

――みなさんの体験を踏まえて、これから親の介護に向き合うことになる40代の方に伝えたいことを教えてください。

えふ プロフィール
認知症も介護も、対岸の火事ではないよ、ということを伝えたいです。そのためにはある程度今から覚悟をしておくこと。介護がはじまった時にすぐに調べられるように、「地域包括支援センター」や「身体介助」等、介護のキーワードだけでも知っておくといいと思います。

くどひろ プロフィール
僕はお金。お金だけは、貯めておいて損はないです。自分の場合、病気や介護の知識は、その時が来てから必死に勉強してもいいですけど、お金はそうはいきません。自分が介護者になってみて、貯金しておいて本当に良かったと思ってます。

なな プロフィール
自分の地域にはどんな相談窓口があって、どんな情報がもらえるのか、当たりをつけておくことも大事ですよね。介護の大変さは、結局当事者になってみないと分かりません。でも、普段からアンテナを張って、漠然とでもいいから情報収集をしておくことで、助かることもあるんじゃないかな、と思います!

The following two tabs change content below.
認知症ONLINE 編集部

認知症ONLINE 編集部

認知症ONLINE(オンライン)は、認知症に関する情報を発信する情報ポータルサイトです。認知症の介護でお悩みの方、認知症に関心がある人に向けて、認知症の介護や予防・改善方法、ほっと一息つけるエンタメ情報など、あらゆる情報を分かりやすくお届けします!

編集部おすすめ記事

この記事を読んだ人にぜひ読んでほしい、その他の記事

介護のお仕事

新着記事

Facebookコメント