年間1万人が行方不明。認知症の徘徊、原因と対策を知る

徘徊の原因と対策

警視庁の発表によると、認知症を持つ高齢者の行方不明者の数は年間1万322人(2013年実績)。1日あたり30人近くのお年寄りが姿を消していることになります。中でも深刻なのは、交通機関が発達している都心部。電車やタクシー等で遠くに行ってしまうケースも多く、発見率の低さが深刻です。

この背景にあるのは、「徘徊」と呼ばれる認知機能低下が引き起こす、認知症の周辺症状です。徘徊の原因とは何なのか、介護者はどう向き合うべきなのか、考えます。

徘徊とは

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認知症になると、家の中や外を歩き回るといった行動が見られます。「徘徊」とよばれるこうした行動は、認知症が引き起こす代表的な行動障害です。脳内の、今いる場所や時間を判断する「見当識」機能が侵されることで、今の状況が判断できなくなる結果、「歩き回る」ことになるのです。

本人に道に迷った自覚がなかったり、たとえ道に迷ったことを認識しても、その後どう解決したらよいか分からず歩き続けた結果、行方不明になることが多いようです。認知症が引き起こす徘徊は、交通事故や転倒など、本人の命を脅かすリスクも高く、深刻な問題です。

理由もなく歩き回っているのではない!

「徘徊」という言葉を検索すると、

《名・ス自》あてもなく歩き回ること。うろうろと歩き回ること。(welio辞書)

と出てきます。ただ、注意したいのが、上記は一般的に使われる「徘徊」の意味であり、認知症の場合、何も目的がないのにただ歩き彷徨っているのではなく、本人の中ではきちんとした理由があることが多いのです。例えば、下記のようなことです。

これまでの日課を守りたい

例えば、通勤や散歩といった、長い間その人の生活サイクルに組み込まれていたことがあった場合。そうした日課は、認知機能が衰えても習慣として残っています。定年まで仕事をしていた人であれば、まだ自分は働いていると思い込み、仕事をしに外にでかけることもあります。

帰りたい場所がある

今いる場所は本来の自分の家ではないと感じ、「住み慣れた家に帰りたい」と外に出てしまうケースです。行先がはっきりと分からないまま歩き続けたり、電車やバスに乗った結果、本来の目的を忘れてしまい、途方に暮れることも多いようです。

何かを探している

自分の家や職場、大切な人など、探している対象を求めて歩くケースです。探してもみつからないので、どんどん歩くうちに、かなり遠くまで行ってしまうこともあります。(認知機能が乱れると、「疲れる」という感覚も鈍くなり、休みなく歩き続けても平気な場合があります)

ピック病特有のケースも

ピック病と呼ばれる前頭側頭葉型認知症の場合、同じことを繰り返す行動が見られることがあります。これは、ほかの徘徊とは異なり、今いる場所の把握はできているため、行方不明にはなりにくいという特徴があります。

徘徊を怒って制するのは逆効果!

徘徊の源にあるのは、本人の不安な気持ちです。怒ってしまうと、怒られたというネガティブな感情だけが残ります。「怒られる場所=居心地が悪い=自分の家ではない」という気持ちになり、結果的にさらに外に出ていきたくなる衝動を高めます。

最終的に、本人にとっての目的(家に帰りたい、探しているものがある、等)が無くならない限り、また同じ事を繰り返してしまうのです。

徘徊がはじまった時、介護者はどうすればいい?

では、家族の徘徊がはじまった場合、介護者は具体的にどんな接し方をすればよいのでしょうか。対策の例をご紹介します。

◆本人の不安な要素を探る

「何かお探し物ですか?」「どこへ行かれるのですか?」等の声がけで、本人が何を不安に感じているのか、探ってみてください。精神的なものだけではなく、尿意や便意を感じていたり、幻覚に怯えて逃げている、といった場合もあります。
頭ごなしに止めるのではなく、まずは、本人の言葉に耳を傾けることが大切です。

◆気持ちを逸らしてみる

本人の話を聞きつつ、まずはお茶でもと飲み物を出したり、家事を手伝ってもらったり、本人の気分を紛らわせるような働きかけをしてみるのも一つの方法です。近所のスーパーやコンビニまで付いてきてもらう等、少し外の空気を吸うだけで落ち着く場合もあります。

◆できれば、一緒に歩いてみる

今いる場所が落ち着かないことが原因になっている場合、徘徊を制することが本人のストレスにつながってしまいます。ストレスは、認知症を進行させる大きな要因です。可能であれば、本人の気持ちが落ち着くまで、介護者が外歩きに付き添ってあげるのがよいでしょう。
一緒に話をしながら歩いてみて、様子をみて家に誘導します。

◆徘徊対策用GPSを持ってもらう

家族が気づかず出て行ってしまったことを想定して、本人の現在地が遠隔でも確認できるGPS端末を持ってもらうのも手です。最近では、GPS機能を搭載した靴やアクセサリーも販売されているので、利用を検討してみてください。



自治体によっては、携帯用GPS端末の貸し出しを行っているところもあります。お住まいの市区町村に問い合わせてみましょう。

◆近所の人やお店、警察に事前に一言かけておく

あらかじめ周囲に声をかけ、地域の見守りネットワークを作っておくことも有効です。近隣に住む人や、お店、警察に事前に情報を共有しておくことで、万が一行方不明になった時にも発見しやすくなりますし、一人で抱え込まない点で気持ちも楽になります。

身元不明者を確認できる特設サイトを知っておこう

国や自治体の徘徊対策も広がりつつあります。2014年6月、警察庁では全国の警察署に「認知症に係る行方不明者発見活動の推進について」の通達を出し、自治体などと連携し、認知症行方不明者の発見、保護に努めるよう働きかけました。また、住民のほかタクシーなどの交通機関、コンビニなどの民間企業も参加し、日常の声掛けや捜索につなげる「徘徊・見守りSOSネットワーク事業」が全国600以上の自治体で実施されています。

厚生労働省は、身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイトを開設しています。
こちらで、各自治体が公表している行方不明者の情報を確認できます。

ただ、「個人情報の保護」が壁となり、いまだ上記サイトに掲載されている行方不明者の情報はまだ少なく、充分機能していないのが現状です。

さいごに

認知症になる人が益々増える中、徘徊問題とどう向き合うかは、社会全体の大きな課題。当然、家族だけで見守るのは、限界があります。目指すべきは、徘徊をなくすことではなく、徘徊をしても安心できる街づくり。今後、地域で認知症に対する理解を促し、支援の輪を広げていくことが望まれます。

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認知症ONLINE 編集部

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