認知症が深い高齢者も「集中」できる音楽とは

高齢者が集中する音楽

「音楽の花束」のGOTOです。前回の文章で、認知症の深いご高齢者にも音楽を集中して楽しんでいただけるよう工夫していることを書きました。これまで、子ども会のリーダーや小学校の音楽科教諭を経験してきて、子ども向けのレクリエーションの工夫は高齢者にも活かせることに気が付きました。今回は、そのことについて書いてみます。

前回記事:認知症の高齢者に「伝わる」音楽とは

音楽への集中に欠かせない3つの要件

歳を重ねると、一つのことに集中することが段々と難しくなります。特に、認知機能の低下が進むと、なおさらです。「音楽の花束」では、高齢者施設を舞台に、さまざまな音楽プログラムを手掛けていますが、演奏中ずっと耳を傾けていただくことの難しさは日々実感しています。GOTOは、皆さまに集中して音楽を楽しんでもらえるにはどうしたらいいか、日々考えています。

そのヒントになる一文を紹介いたします。

◆1 話し方・・・内容を端的にいうことと、声の強弱、視線、姿勢なども含む・相手の目を見る、同じ視点(座っていればその位置)で話しているか、導入の語りかけの重要さなど

◆2 間・・・不必要な間をなくし必要な間を取る、慣れたらじらすような間を取る

◆3 隊形と位置・・・リーダーの位置は声が届くか、見やすいかなど

(明治図書TOSS茨城NEVER、桑原和彦編著より 抜粋)

これは、「学級レクが3倍盛り上がる“集団遊び”50選」という本のまえがきにあった一文です。学校用のレクリエーションについての内容ですが、そのまま現在ご高齢者向けのイベントやコンサートでGOTOがしていることでもあります。

ご高齢者向けのコンサートでも集中して楽しんでいただける音楽を提供する方法、それはこうした当たり前のことがらを「相手の立場」すなわちご高齢者の立場に立って、音楽家として、また企画者としての目で見直し、置き換えるということだと感じています。

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特に配慮すべきは、「スピード」と「間」

例えばご高齢者の場合は、周囲の声が聞こえにくく、理解もゆっくりになっている場合があるので、音楽プログラムを実施する際は、次のような具体的な工夫が必要です。

  • ゆっくり、丁寧に話す
  • 話す際は「間」を十分にとる
  • 演奏者も司会者も参加者から見えやすい位置にいる
  • 演奏者や楽器を身近に感じられるよう、参加者に近づく場面をつくる
  • 楽譜や歌詞の内容は大きく見やすくする
  • いつ退席しても大丈夫だと声をかけ、途中退席用通路をつくっておく

特に配慮すべきは、スピードと「間」。参加者がきちんと楽しんでくれているか、取り残されている人はいないか、全体の反応をみて、調整していくことが肝心です。また、安心してその場にいられる環境づくりも大切です。

高齢者向けの仕事をスタートした当時、ふと手に取った「高齢者の音楽療法 心をつなぐ合奏曲38」(春秋社)に加齢による感覚の変化と、どのように対応することが可能かをわかりやすく記述してあり、とても参考になりました。

音楽と体操は好相性。リハビリ効果も伝えます

重ね重ね申し上げますが、GOTOの活動は音楽療法ではありません。あくまで音楽を楽しむ豊かな時間をお届けすることです。しかし、高齢者との関わりに特化したデリケートなところがたくさんあります。コンサートをするにあたり、自分自身の経験に基づいた方法だけでなく、このように音楽療法をはじめ専門的な研究からおおいに学び、ひとりよがりではない展開を心がけることを心に課しています。

そうした意味でGOTOがよく手に取っているのは「介護予防 リハビリ体操大全集」(講談社 太田仁史著 三好春樹編集協力)です。ここには加齢とともに直面するさまざまな身体的問題を防ぐための、無理なくできる体操がわかりやすく記載されています。

体を動かすことの意味や動作学も書き添えてあるので、音楽に伴った動きとしてご提案しながら「呼吸器官に働きかけています」「誤嚥を防ぐのに効果があります」など具体的なお話をすることができます。

また、こうした動きを伴う活動はかならず施設職員のかたのご意見を伺うことも、無理なく楽しんでいただけるプログラム作りには欠かせないことです。

お年寄りも楽しめる、ヨガ×音楽の新プログラム「深呼吸ヨガ」始まります!

「音楽の花束」企画の新プログラム、「深呼吸ヨガ」は、こうした現場の職員のかたとヨガインストラクター沢りえさん、オカリナ奏者の江波太郎さんとのコミュニケーションの中からうまれました。それぞれのご専門を活かし、ご高齢者の立場で作ったプログラムが役立ち、楽しんでいただけることはとても素晴らしいと思います。
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わたしは、健康と幸福のために音楽を用いることが益をもたらすということを明らかにし、さらに音楽が有効である理由を明らかにしていく(一麦出版社「高齢者のための療法的音楽活用」より)

これは、高齢者向けのコンサートをスタートしたときから大切にしている、アリシア・アン・クレアの言葉です。GOTOはこうした研究を少しでも吸収し、より豊かな音楽の場を広げていきたいと思っています。

ご高齢者と介護者、ご家族など周辺のかたがたにも、音楽で幸せな時間を届けていきたい。

GOTOのチャレンジは相変わらず手探りのまま、一歩ずつ進んでおります。次回もまたどうぞよろしくお付き合いくださいませ。

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後藤 京子(GOTO)
「音楽の花束」代表。星美学園短期大学講師。東京音楽大学卒、同大学第2副科オルガン専攻修了、邦楽演奏コース長唄三味線専攻修了。1986年日本ピアノコンクール全国大会第3位、受賞記念演奏会出演、1987年読売新人演奏会出演。NHK邦楽技能者育成会に学ぶ。短大西洋音楽史講師、小学校音楽科教諭を経て2004年より「音楽の花束」のプロデュース活動を始める。2015年きらめき認知症シスター(きらめき認知症トレーナー協会認定)取得。カトリック東京カテドラル関口教会オルガニスト。デイサービス「空の花 高井戸」取締役副社長。>>公式サイトへのリンクはこちら「音楽の花束」
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