タメ語に赤ちゃん言葉…介護職員の言葉遣いの乱れを考える

by 佐藤 瑞紀佐藤 瑞紀 115349views
介護職員の言葉遣い

介護現場で職員が高齢の利用者にタメ口をきく…そんなシーンに心当たりはありますか?「介護は究極のサービス業」とよく言われます。それゆえに、一般社会では非常識な慣習がまかり通る世界でもあります。その特徴のひとつが「言葉遣い」なのではないかと、働く中で感じることがありました。今回は、介護職員の言葉遣いについて、経験を踏まえて書いてみたいと思います。

これってどうなの?介護職員の言葉遣い

介護の仕事は、利用者の生活に密着した仕事です。食事や入浴、排泄…そうした日々の暮らしに欠かせない行為をサポートします。そうする中で、利用者との距離感が分からなくなるのか、一緒に働いていても不快に感じる言葉遣いを耳にすることがありました。

タメ語で話す

「できたじゃん」、「あっちに行きたいの?」、「起きてる?」等、まるで親しい友達相手のような言葉を使うケース

命令口調で話す

「ここで待ってて」、「早くして」、「なんで出来ないの」等、利用者に命令するような言葉を使うケース

赤ちゃん言葉で話す

「あーんして」、「モグモグできる?」、「上手に食べれたね~」など、小さい子供相手に話しかけるような言葉を使うケース

あだ名で呼ぶ、呼び捨てにする

「◯◯ちゃん」、「◯◯っち」等、あだ名をつけたり呼び捨てにしたり、職員同士で呼んだりするケース

前提として、利用者は高齢者であり、職員の人生の先輩です。にも関わらず、こうした言葉遣いをする職員のタイプは、若手の新人だったり、ベテランだったり、様々です。

職員ですら違和感を持つわけですから、ご本人や家族の不快な気持ちはどれほどでしょう。中には、内心で職員の言葉遣いに傷ついたり、腹が立っているけれど、言い出しづらくて我慢している、というケースも多いのではないでしょうか。

なぜ、職員の言葉遣いが乱れるのか

職員が乱暴な言葉を使うのには、どんな背景があるのでしょうか。私は、次のような理由が考えられると思います。

接遇・マナーの社会常識がない

これは、歳が若かったり、社会人経験がない新人職員に多いパターンだと思います。そもそも「歳上の人には敬語を使う」という常識がなかったり、「マナー」という視点がそもそも無いパターンです。勤務先で接遇面での教育がされていない、ということでもあります

歳が近いからいいよね、という甘え

職員の中には、50代や60代の人もいます。そうした年齡的にベテランの職員の中には、「歳が近いし、敬語を使わなくたっていいよね」という考えの持ち主もいます。(そうした人が、80歳、90歳の利用者相手に敬語を使うかというと、使わないのですが・・・)

親しみやすさの現れである、という考え

「利用者との距離を縮めたい」という“善意”から敢えて砕けた言葉を使っている、というケースも多いです。タメ語やあだ名を使うのは親しみを感じてもらうためと考え、気づけばかえって距離ができているというパターンです。

認知症だから伝わらないだろう、という先入観

利用者が認知症を持っている場合、普通の言い回しでは理解されないだろう、という思い込みから、タメ語や赤ちゃん言葉を使っているケースもあります。その場合、認知症でない人には敬語で、認知症の人には赤ちゃん言葉…という、不思議な現象が起こります。認知症であっても感情機能は衰えないので、不快な気持ちを与えることになります。

言葉の乱れは「語尾」に宿る

私は、違和感を感じる言葉遣いの大きな要因は「語尾」にあると思います。

  • 「◯◯できますか?」→「◯◯できる?」
  • 「◯◯ですよね」→「◯◯だよね」
  • 「◯◯お願いします」→「◯◯してね」
  • 「◯◯しましょう」→「◯◯やろっか」

語尾が変わるだけで、受ける印象が随分変わります。言葉遣いの乱れを確認したい時には、まずは語尾を意識してみると良いと思います。

相手との信頼関係があればタメ語も問題なし?

世の中には、ずば抜けた介護技術があって、利用者からとても愛されている職員もいます。そうしたスーパー職員がいつも敬語や丁寧な言葉を使っているかというと、そうとは限りません。タメ語を話したり、利用者を「じじ、ばば」呼ばわりしていても、利用者は全然嫌がらず、むしろ嬉しそうにしている・・・ということもしばしばあります。

でもこれは、職員と利用者との間に「圧倒的な信頼関係」がある場合にのみ成立すると思います。元々信頼関係がない職員が、そのスーパー職員の振る舞いを見よう見まねで真似したところで、失礼な印象しか与えません。

人それぞれ考え方はあると思いますが、信頼関係が築けてきたら少し砕けた言葉で接してみるのはアリ、だと私は考えます。(その場合も、命令口調や赤ちゃん言葉は厳禁ですが・・・)その際も、相手の反応をよく見て、「親しき仲にも礼儀あり」の精神を忘れないでいることが大切だと思います。

言葉遣いの前に、「伝え方」が大事!

同じ言葉を話していても、声のトーンで伝わり方が全く違う、ということも忘れてはいけないことです。きちんとした言葉遣いをしていても、話すスピードが早すぎたり、抑揚が全く無かったり、語気が強い話し方であれば、相手が不快に思うことに変わりはありません。

逆に、相手の目を見て、ゆっくりと、丁寧に話すことは、言葉の内容以上に相手に誠意が伝わることがあると思います。

さいごに

色々と申し上げましたが、私自身、いつも丁寧な言葉遣いができていたかというと、自信がありません。忙しくて余裕がない時は、どうしても口調が強くなってしまうこともありました。言葉というのは、日常に欠かせないコミュニケーションの手段なので、常に意識を働かせていないと、ついつい緩んでしまいがちです。なので、まずは身近な介護現場で飛び交う言葉に、耳を澄ませてみてください。そうして「違和感」を感じることが、まず第一歩だと思います。

関連記事:認知症を「ニンチ」と略す慣習に終止符を!

介護職員のタメ語はOK派?NG派?緊急アンケート実施!

介護職員の利用者へのタメ語について、ツイッターにて下記のようなアンケートを取ってみました。(11/3:編集部追記)

結果、「時にはアリ」が70%(回答数:53件)、「絶対なし」が30%(回答数:23件)という、圧倒的に「時にはアリ」が多い結果となりました。(全体の回答数:76件、調査期間:2015/11/2~11/3 ※認知症ONLINEツイッターアカウント上で調査)では、介護職員のタメ語について、どのような意見が聞かれたのでしょうか。

介護職員のタメ語、「時にはアリ派」の意見<

また匿名で下記のようなご意見もありました。

赤ちゃん(子どもに言うような)言葉と、命令口調には気をつけてます。が、利用者さんの方から「◯◯ちゃんって呼んでね」という方もいます。そういう方には、親しみ込めて「◯◯ちゃん」と呼ばせていただいてます。

既に利用者との信頼関係が築けている、という前提があれば、タメ語でも問題ないのでは、という意見が多く挙がりました。日々のコミュニケーションで愛情がきちんと伝わっていれば、失礼にはあたらない、むしろ距離感を縮めることも出来るという意見が目立ちます。

介護職員のタメ語、「絶対なし派」の意見

逆に「絶対なし派」においては、明確な基準を設けないまま利用者にタメ語を使うことのリスクを指摘する声が多く聞かれました。介護サービスを提供する側と、利用する側の立場の違いを普段から意識する姿勢が伺えます。

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佐藤 瑞紀

佐藤 瑞紀

元有料老人ホームのケアマネジャー。22歳で大学卒業してから約12年、老人福祉の世界で経験を積む。約10年介護士として高齢者と関わり、その後生活相談員を経てケアマネジャーとして着任する。高齢者1人1人とコミュニケーションを取りながらケアプランを作成することで、QOLの向上が少しでも実現出来るように考えてきた。現在は結婚を機に退職しており、主婦として日々奮闘中。
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