虐待事件の報道の裏に隠れた介護現場の闇

介護現場の闇

介護施設における高齢者への虐待報道を目にする機会が増えています。家族を施設に預けている方は、そのたび気が気ではない思いを感じていること思います。今日は、介護施設で現役職員として働く私が日々感じている虐待の現状を綴ってみたいと思います。

職員の「無知」という暴力

「虐待をしたことがあるか?」を自問自答してみた時に、情けないですが、私はNOと言い切る自信はありません。特に介護の仕事をはじめた頃を振り返ってみると、今ほど虐待に対しての研修やルールもありませんでした。手足の拘束や、掻きむしりや便いじり対策に使われるミトン(手袋みたいなもの)をつけることも、ケアの一環として行われていました。だから、疑うこともなく行っていました。「無知」という言葉ほど恐ろしいものはないな、と今は感じています。

私が実際に見てきた虐待現場の事例

自分で虐待を意識すると、周りの行動にも目が届きます。私がこれまで見てきた虐待は、次のようなものがあります。

  • 髪の毛をぐちゃくちゃにする
  • 夜中に足の裏をくすぐる
  • 起き上がろうとする人を力ずくで押さえつけ寝かせる
  • 腕をつかみ行動を阻止する
  • 興奮したお年寄りに激怒し叩き返す
  • 寝ていたからという理由で薬を服用させない…等々


これらは全て、ひとつの現場で起きたことではなく、複数の現場でみました。つまり、加害者は特別なひとりではないということです。この対応を見た時は、それが間違っていること、虐待であるということ、どれだけのリスクがあるのかを、その都度スタッフに強く伝えました。しかし、言われたスタッフは「虐待」という認識がないどころか、懲りずにまた私の見えないところでしていたりしていました。なぜ、見えないところでしているのか分かったかというとお年寄り自身が声を上げてくれたり、周りのお年寄りがあの子またしてたでと悲しい報告をしてくれるのです。

虐待現場を押さえるには、家族の協力が必要

驚くべきことに、先ほど述べたような虐待の現状を上司に報告しても、すぐ対応してくれる人と、そうでない人がいます。虐待の話をすると、「許せない、そんなん通報せな」と簡単に言われますが、通報しても、上司に証拠を隠ぺいされてしまえば、現状は変わりません。それどころか、逆に苦しむ人や、本来なら救えるはずの命も救えない状況になることだってあります。そして、虐待の事実を訴えたことで、声をあげたスタッフが働けなくなったり、働きづらくなる環境に陥ることも少なくありません。悲しいことですが、これは私が知り得る事実です。

介護施設での虐待について、ご家族が「もしかしたら…」と感じた場合、「やっぱり」となるケースが多い。「絶対」と思ったなら、それは事実である可能性が高いです。私がお伝えしたいのは、虐待の事実に光を当てるには、ご家族の協力が必要ということです。

介護スタッフとしてご家族にお願いしたい事

どうか、可能な限り面会に足を運んでください。そして、いつも同じ時間や曜日ではなく、たまに違う時間に面会に行ってみてください。耳を澄まして、他のお年寄りへの対応を見てみてください。そうすると、おのずと自分の大切な人への対応がきちんとケアされているのか見えてきます。

面会に行った時に、今までと違う変化があったときには気にかけてみてください。例えば、次のようなことです。

  • 元々笑顔が絶えなかったのに笑わなくなった
  • 体に触れようとした時に手を振り払ったり、ビクっとしたりする
  • しきりに怖い、帰りたいなど発言する

こうした言動が見られたら、注意してください。遠方や諸事情でなかなか施設まで行けない方なら、電話でもいいと思います。連絡する頻度を増やして、ご本人の様子を観察してください。体の虐待はあざなどで見つけることが可能ですが、言葉の暴力などは見えないことについても、知っていてほしいと思います。

参考記事:介護現場の身体拘束、どこからが当てはまる?

虐待を撲滅するにはどうしたらいいか

虐待を介護現場から完全に無くすことは、現状では難しいことかもしれません。けれど、虐待ゼロに向けて出来ることはたくさんあると思います。

まずは、指導者の質を上げること。虐待を生み出す現場の雰囲気を決めるのは、指導者です。指導者への意識・啓蒙が不可欠です。
また、新しく現場入りする介護未経験者や、無資格の人への教育も大事です。何かを教えるときに、「これはこういう決まりだから」と指導するのではなく、「何故こうするのか」、「それによるメリットは何か」、「デメリットはないか」と、一つ一つのことに対し意味があることを伝えること。この過程を省略すると、職員の無知を生み、虐待につながります。

介護現場は資格がものを言う世界ですが、資格があるから偉いわけではないこと。介護の世界は日々変化していること。お年寄りはものではなく、人間なのだということ。だから、寄り添いのできる個別ケアが必要であること。この事実が、一刻もはやく、現場に浸透することを願っています。

また、スピーチロックと呼ばれる言葉での拘束も虐待の一種ですが、これに関しては、信頼関係に基づいたケアであれば、「待って」という言葉も相手に苦痛にならない「待って」になると思います。一人ひとりが普段の信頼関係づくりを意識することが、何より大切なことだと思います。

※トップ写真と記事内容は関係ございません

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なっちゃん

なっちゃん

1978年生まれ。高校を卒業後、病院の看護助手から始まり、現在は老人保健施設の認知症フロアを担当。休日には癒しを頂きにタッチセラピーのボランティア活動を行っています。保有資格は、介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)、介護職員基礎研修、介護福祉士、福祉用具専門相談員。
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