先日、安部総理が「介護離職ゼロ」目指して特別養護老人ホームの増設整備へ乗り出すと発表しました。確かに、介護が原因で仕事を辞める人は年間10万人とも言われていて、深刻な事態です。けれど、その解決策が「特養増設」一本というのは、疑問が残ります。本来なら仕事を続けたい人が、介護を理由に退職せざるを得ない―――その大きな原因は、「介護について職場の理解が得られないこと」にあるのではないでしょうか?
私は、約5年前からアルツハイマー型認知症を持つ母親の自宅介護と会社員としての仕事を両立しています。いわゆるワーキングケアラーです。今回は、介護と仕事を両立する中で、「重要だなぁ」と感じた気付きをまとめたいと思います。
目次
思わず介護離職が頭をよぎるシーン
「もう会社を辞めないといけないかもしれない…」そう考えるのは、急遽会社を休んだり、遅刻・早退しなければならないことが増えてきた時です。在宅介護をしていると、ザラに起きます。我が家の場合だと、次のようなケースです。
朝の体調不良で遅刻
認知症の有無を問わず、高齢になると体力が落ちるため、急に体調を崩したり、体の不調を訴えることが多くなります。夜は元気だったのに、翌朝起きたら具合が悪くなっている…!ということもあります。そうなると、病院に連れて行く必要があるので、会社は遅刻します。
デイサービスからの呼び出しで早退
朝は元気だったのでデイサービスに行ったものの、急に熱が出てしまいデイから呼び出しを受けることもあります。その場合は、会社を早退してデイへ迎えにいき、病院までタクシーで連れて行くこともあります。
交番からの呼び出しで早退
また、家にじっとしていられず、徘徊して家に帰れなくなり、警察に補導され、交番から「すぐに迎えに来てください」と電話が入ることもあります。そんな時は、なんとか仕事を調整して急いで迎えに行かなければなりません。
定期的な通院で会社をお休み
呼び出しや体調不良がなくても、会社を休んだり早退したりする必要もでてきます。うちの場合、母はアルツハイマー病に加えて、持病を抱えていて、定期的に病院に通っています。診察は基本的に平日なので、通院の日は有給休暇を取って病院に付き添います。
行政関連の手続きで早退
行政関連の手続きも、平日昼間しかできないことのひとつ。一度手続きすればそう頻繁にあるものではありませんが、最近では介護保険の更新面談のために会社を早退しました。
自分のための有給休暇はもったいなくて使えない
これはワーキングケアラーのあるあるネタかもしれないのですが、自分のために有休を使うことは、ほとんどゼロです。介護が始まる前は、旅行に行ったりしてちょくちょく有休を取っていましたが、今はいつ急に休むことになるか分かりません。年間で取得可能な有休は限られているので、大切に使っています。
本当に助かっている会社の制度
実際に仕事と介護を両立していて、「助かった!」と感じるのは、次の制度です。
フレックスタイム制度
コアタイムとして決められた時間以外は、いつ出勤しても退社してもOK、という制度。早く帰った日は別の日に残業するなどして、ひと月単位で勤務時間を調整できるので、重宝しています。
時間単位有休制度
1時間単位で有休を取得できる制度です。午前休や午後休を使ってしまうと一気に残有休が減りますが、時間単位で刻むことで、少しずつ使うことができます。こちらも重宝しています。
時間の融通が利きやすい仕事内容
これは制度ではないのですが、業務コントロールがしやすい仕事内容かどうかも、重要なポイントだと思います。私の場合、外勤ではなく内勤で社内業務を行うデスクワークなので、ある程度自分の裁量で業務時間を調整することが可能です。これが、出張や顧客との打ち合わせが頻繁に入る仕事だったとしたら、大事な仕事に穴を開けてしまうことになり、仕事を継続することは厳しかったかもしれません。
「職場の理解」があれば仕事と介護は両立可能!
いくら制度がいくら整っていても、「取得実績がゼロ」だったり、「なんで介護で休むの?」といった雰囲気があったりすると、両立はとてもしづらくなると思います。
ありがたいことに、私の職場では元々有休が取りやすい雰囲気で、介護で休むことに対しても寛容で協力的な人が多いです。介護をしている社員自体はまだ少数ですが、育児中の社員は多く、産休や育休、時短制度などの制度が活用されていることが一因かと思います。
改めて、自分が介護と仕事を両立できているのは上司や同僚など職場の理解・協力があってこそなんだと実感します。逆に言えば、職場の理解と協力があれば、両立は可能ということでもあります。
私はたまたま、理解も制度も整った職場にいるのかもしれません。けれどこれを単に「運が良かった」「恵まれている」で済ませてはいけないとも思います。
介護離職ゼロに向けて本当に必要なこと
高齢化はますます進み、働きながら介護する人が今後さらに増えるのは間違いありません。親の介護は誰もが多かれ少なかれ直面するといっていいでしょう。
介護と仕事の両立をしやすい社会を実現するには、もっと企業の介護支援が広がることが不可欠です。企業側も、介護離職が原因で人材が流出するのは避けたいはず。介護休業やフレックスタイム、短時間勤務の導入など、幅広いサポートを充実させて、社員が長く働ける環境づくりに取り組むべきで、そのための国の支援も不可欠だと感じます。
介護が必要になって、泣く泣く仕事を辞める人も多い昨今。介護者自身も、自分の置かれた状況を信頼できる上司に相談し、介護への理解をしてもらう地道な取り組みが必要なのかもしれません。私も、微力ながら考えて声に出していきたいと思います。
参考記事:40代50代で急増する介護離職。絶対今から準備するべきこと


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