アロマテラピーが認知症予防・進行防止になぜ効果的なのか

【アイキャッチ】アロマテラピー

良い香りがして癒される、と女性を中心に人気の高いアロマテラピーですが、最近では、認知症予防への効果も注目されています。2014年、鳥取大学の浦上克哉先生が、アロマテラピーを用いた認知症の予防や症状改善の研究結果を発表して以来、TV等で取り上げられ、一時期全国のお店で精油(エッセンシャルオイル)が品切れになる事態も発生しました。今回は、アロマテラピーと認知症との関係について、考えてみたいと思います!

五感の中で、直接脳に伝達するのは「嗅覚」だけ

「懐かしい香りがして、昔の思い出が蘇ってきた」

こんな経験はありませんか?
これは、「プルースト効果」と呼ばれる嗅覚から過去の記憶がフラッシュバックする心理現象です。私たちが持つ五感のうち、唯一「嗅覚」だけは、「大脳新皮質」を経由せず、「大脳辺縁系」へ直接伝達されることが知られています。大脳辺縁系は、喜怒哀楽といった感情や、食欲などの本能的な行動に働きかけるのです。香りから思い出す記憶は、他の記憶とくらべて強く残るのは、そのためといえるでしょう。

脳と香りの関係

アルツハイマー病は嗅覚障害からはじまる

認知症、特にアルツハイマー型認知症を発症すると、まず脳の記憶機能をつかさどる「海馬」が萎縮すると考えられてきました。しかし、近年の研究で、海馬に直結した「嗅神経」と呼ばれる嗅覚をつかさどる神経細胞が先にダメージを受けることが分かってきました。

「嗅覚が鈍るのは、アルツハイマー型認知症の前兆」
「もの忘れよりも先に、匂いが分からなくなる」

ということは、2007年ベイシカゴのラッシュ大医療センターのロバート・ウィルソン氏の研究でも発表されています。こうした背景をもとに、嗅神経を効果的に刺激することで認知症を予防・改善する可能性を見出したのが、アロマテラピー療法の第一人者である、鳥取大学の浦上克哉教授です。

なぜ、認知症予防・改善にアロマテラピーが効くの?

嗅神経は、もともと他の脳神経より高い再生能力を持っており、適切な香りと効果的な刺激があれば機能が回復しやすい特性があります。浦上教授は、嗅覚の活性化(オン)と沈静化(オフ)を繰り返すことで、においを感じる嗅神経とともに記憶をつかさどる海馬も活性化するといいます。

中でもアロマテラピーを使用する利点としては、

  • 世界中で長年使われていて、安全性が高い
  • 香り成分の濃度が高く、嗅神経を効果的に刺激できる

主にこの2点が挙げられます。

認知症予防・改善に特に効果のあるアロマテラピーの種類

認知症に効果を発揮した4種類のアロマと効能は、下記の通りです。

ローズマリー:集中力が増す

「若返りのハーブ」とも呼ばれるローズマリーは、血行促進や新陳代謝を促し、集中力・記憶力を向上させる効果があります。

レモン:気持ちが高揚する

とてもフレッシュな香りがするレモンのアロマオイルは、気持ちの切り替えに最適です。リフレッシュ効果があり、気分を高める効果があります。

ラベンダー:安眠効果が高まる

ラベンダーの香りに含まれる「酢酸リナリル」という成分には神経を鎮める作用があります。深くリラックスでき、安眠にもつながります。

オレンジスイート:高いリラックス効果

甘くフレッシュな香りが幅広い年齡に人気のオレンジスイート。柑橘系に多い殺菌効果があり、冬場の風邪の予防などにも役に立ちます。

アロマテラピー使用時に注意すべきこと

アロマテラピーを取り入れる際、下記のポイントに注意しましょう。

100%天然成分の精油(エッセンシャルオイル)を使う

エッセンシャルオイル(精油)精油とは、植物から抽出したピュアオイルのこと。100%天然植物成分で、質の高いオイルです。一般的に「アロマオイル」と呼ばれるているものは、精油に加えてアルコールやキャリアオイルといった化学物質が含まれています。香り成分は脳に直接届けられるので、質の良くない嗅いだ場合、体調が悪くなることもあります。必ず、100%天然成分の精油かどうかを確認しましょう。

※精油かどうかを確かめるには、ラベル部分や使用説明書をチェックしましょう。精油の場合、必ず精油製品情報(精油の学名、抽出部分、抽出方法、生産国または原産国の情報など)が記されてます。

日中と夜で精油を使い分ける

認知症には、時間によって精油の組み合わせや配分量を変えるとより効果的だと言われています。精油には「神経の活性化」を促すもの、「神経の鎮静化」を促すものがあり、それぞれ時間帯によって使い分けることが大切です。 具体的な使い方は、下記の通りです。

【使い分け】昼(日中)用のアロマ、夜用のアロマ

昼・・・レモン 1滴 + ローズマリー 2滴 ⇒脳を活性化
夜・・・ラベンター 2滴 + オレンジスイート 1滴 ⇒脳をリラックス 

また、下記のような目的ごとに精油を使い分けるのも効果的です。

【アロマの使い分け】食欲増進と嚥下障害

食欲増進⇒レモン 2滴 + ジュニパーベリー1滴
嚥下障害⇒ブラックペッパー 2滴 ※ティッシュなどに染み込ませて

精油の禁忌事項に注意する

純度が高く、香りの強い精油には禁忌事項があります。例えば、ローズマリーの精油は、妊娠中の方や高血圧、てんかんを持つ人には不向きですので、使用時は注意が必要です。また、レモンは肌に塗布して日光を浴びると、肌がシミになってしまう特徴があります。持病をお持ちの方は、お医者さんと相談して使うことをオススメします。
そして、匂いの好みには個人差があり、苦手なものを使い続けるとかえってストレスになりますので、合わない場合は、無理して続ける必要はありませんので、ご本人の体調を見ながら使いましょう。

ディフューサー、アロマペンダントを活用する

手軽にアロマを取り入れるなら、ディフューサーやアロマペンダントが便利です。

また、こうしたグッズを用意しなくても、ティッシュに精油を染み込ませたり、お湯を張ったカップに垂らすなど、身近なものを使って試してみるのも簡単でおすすめです。

実際の介護現場でアロマテラピーを取り入れてみて

介護施設で働いていた頃、よく利用者さんに、アロマを使ってマッサージをしていましたが、とても好評でした。認知症を発症していて、忘れっぽくなっているお年寄りも、「マッサージが気持ちがよかった」ということは良く覚えていらして、毎回、ご自分の順番を心待ちにされることがありました。いつもと違う体験が、匂いと結びついて記憶に深く残っていくようでした。

今後高齢化が進むにつれて、医療や介護分野でのアロマテラピーの必要性は高まるでしょう。ぜひ、普段の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか?

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いのうえひとみ

いのうえひとみ

介護福祉士。2児の子育てをしながら資格を取得。NPO法人理事、訪問介護事業所サービス提供責任者を経験後、平成19年に小規模通所介護事業所の立ち上げに関わる。管理者・相談員を務める。外出行事や趣味に特化したプログラムを企画。平成27年、より多くの人をサポートしたいと独立。現在、介護保険外の外出サービス「サンキュウハンド」代表
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