コウノメソッドで見る!アルツハイマー型認知症の典型的な改善例

by 河野 和彦河野 和彦 35326views
アルツハイマー型認知症×コウノメソッド

今回は、コウノメソッドの観点で、症状別の典型的な改善例について、お伝えしたいと思います。まずは、アルツハイマー型認知症の症例です。

まずはピック病、レビー小体型認知症を疑う

90歳男性がふつうに歩いて初診しました。ピック病(前頭側頭型認知症)に表れやすい症状(自分の置かれた立場がわかっていない、無礼なふるまい、子供っぽさなど)は見られません。

改訂長谷川式スケールは19点。言葉の意味が分からなくなる語義失語はなく、易怒はあるようですがスイッチ易怒(急に怒ってけろっと戻る)ではなく、甘いものは好きですが昔からとのことでした。(ピック病の特徴として甘いもの好きになることあります)このようにピック病の決め手はありません。

次にレビー小体型認知症ではないかのチェックです。歯車現象はファーストリジッド(肘の曲げ伸ばしで筋肉の抵抗が繰り返されるパーキンソニズムほどの所見はない)のみで幻覚、寝言はないそうです。

症状で判断するアルツハイマー型認知症

彼は典型的なアルツハイマー型認知症と考えてよさそうです。このようにアルツハイマー型は、ピック病でないこと、レビー小体型でないことを確認して、残ったものがアルツハイマー型という「除外診断」の形で診断することが多いです。アルツハイマー型は健康そうな方ばかりで「元気ボケ」という別名があるくらいですから一般の人には気づかれないことが多いですし、異常な面を家族が医師にちゃんと伝えないと医師も気づいてくれません。

積極的にアルツハイマーらしいと思える患者は、初発症状が迷子というような頭頂葉の萎縮のサインが初期から出る方、また「病識の欠如」と言いましてアルツハイマー型とピック病は自分の記憶障害を認めない傾向が強く、レビー小体型や腦血管性は病識がある場合が多いです。改訂長谷川式スケールをおこなって25点以下であるのに自分は正常だと言い張る場合は、ほぼ間違いなく認知症ですからちゃんと改訂長谷川式スケールを行うことが大切です。

アルツハイマー型認知症の治療法

この患者さんには、ふつうにアルツハイマーセットを処方しました。ドネペジル(アリセプト)3mgを14日のあと、5mgを16日です。はじめて脳のアセチルコリンが賦活されるので制吐剤ナウゼリン10mgとともに、バードシューテイング(中核薬によって易怒が増強することを阻止するため先手を打ちます。飛んでいる鳥の進行方向に射撃する意味)でグラマリール(一般名:チアプリド)25mgを併用しておきました。

30日後、明るい顔で入室してきた彼は自分から「よくなりました」と言いました。家族も明確によくなったといいます。これがコウノメソッドの初級編的なケースです。これがわからないと、レビー小体型、ピック病といった中級編には上がれないですね。

アリセプトとドネペジルについて

一般的な中核薬として認知されているアリセプトですが、今は後発品が広く普及しています。アリセプトは先発品であるため価格が高値です。もし、アリセプトが処方されているようなら、後発品に変えてもらうことをおすすめします。ドネペジルは、アリセプトの一般名であり後発品名でもあります。効用には、違いはありません。アルツハイマー型認知症治療薬の4成分の中でもっとも興奮性が高いお薬ですから、5mgに増量されたときに、患者さんが怒りっぽくなったりしたら、介護者が医師の了解のもとで減らしてみるべきです。

この患者さんでは私のほうからあらかじめドネペジルでの興奮を見込んで抑制系を1剤併用しておきました。2回目の外来では、もう体がドネペジルになれたはずですからグラマリール、そして制吐剤ナウゼリンも中止してよいでしょう。

症例1

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河野 和彦
1958年名古屋市生まれ。名古屋大学医学部大学院博士課程修了後、医療法人共和会共和病院老年科部長を経て、2009年より名古屋フォレストクリニック院長。新しい認知症ケア「コウノメソッド」の第一人者。認知症治療研究会副代表世話人も務める。代表的な著書に『完全図解 新しい認知症ケア 医療編』、『医者を選べば認知症は良くなる!』、『コウノメソッドでみる認知症診療』等、著書多数
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