認知症の母に現れる症状の一つに「妄想」があります。
妄想とは
1.根拠もなくあれこれと想像すること。また、その想像。
2.真実でないものを真実であると誤って考えること。
3.根拠のないありえない内容であるにもかかわらず確信をもち、事実や論理によって訂正することができない主観的な信念。
goo辞書より
母の妄想が増えていくにつれて疑問に思っていたのですが、生活とリハビリ研究所代表の三好春樹さんの著書 「まちがいだらけの認知症ケア」の中に、3つの「妄想」 のタイプが紹介されていました。うちの実例と合わせてご紹介しますが、人間の奥深さを知ることになりました。
1.被害者利得型
認知症の人自身が「被害者を装う」ことで、構って欲しい!大切にして!注目して!と思うタイプの 「妄想」 です。うちの母で最も多い、誰かに自分の物を盗まれたと思い込む「ものとられ妄想」 もこのタイプに該当します。
自分のことを構って欲しいという気持ちは、人間誰でもあるものです。通常は理性が働くので、これらを抑えながら生活しているのですが、表に出てきてしまうんですよね。
2.心理的負担解消型
被害者利得型を見て、次にこれを見ると 「認知症の方の心の中は複雑だなぁ~」 そう思うはずです。被害者利得型とは真逆の発想で、
「大切にされすぎると、今度は心理的な負担を感じる」
というものです。構わないのもだめ、構い過ぎるのもだめということです。母は、いつもお世話になっている看護師さんさんに対してなぜか
「あの看護師さんに、この前怒られた!結構ピリ辛な人だった」
とか突然言い出します。これももちろん妄想なのですが、最初は意味が分かりませんでした。でも心理負担解消型に当てはめて考えると、「いつもお世話なって申し訳ないなぁ~、悪いなぁ~」って、母はいつも思っているってことですよね。
3.老化拒否型
これは文字通り、「老いを認めない」というタイプです。認知症でなくても、老いを認めない人は相当数いますよね。何かうまくできないと物のせいにしたり、他人のせいにしたりして、老いを認めないというものです。字がうまく書けなければ、ペンが悪い!紙質が悪い!という感じです。
また年齢を聞くと、妙に若い年齢を言ったりしますよね?あれもこのタイプなんじゃないかと。母も亡くなった祖母も、割と若い年齢を言いがちです。老化拒否が妄想の根底にあるのかもしれません。
以上3つが本で紹介されているものですが、我が家特有の型もありますので4つ目としてご紹介します。
<番外編>4.自慢型
劇的ビフォーアフターって、番組ありますよね?家の問題をリフォームで解決するあの番組ですが、母は必ずこう言います。
「これ前に見たやつだ!」
確かに再放送も多い番組ですが、新しい回のものもわたしは見た!と知ったかぶるし、自慢します。外食に行くと、どの店に入っても
「前にここに来たことあるよね?」
と言います。わたしは初めから知っている、すでに体験済みという自慢気な振る舞いをやたらするんですが、実際は初めてだし、未体験なんですよね。自慢気な振る舞いをすることで、自尊心を保とうとしているのかもしれません。
ここまで、妄想の種類をご紹介してきましたが、妄想の理由や背景が見えると、少しラクな気持ちになりませんか?人間の本質が、表面に現れているんだなということが理解できますし、何より理由が分からない事が不安だったりしませんか?それが理解できることだけでも、少し介護者として落ち着くことができます。
今日もしれっと、しれっと。
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