家族の介護を経験した人の多くの悩みは、「本人の希望が分からない中での意思決定を迫られること」だといいます。いつ訪れるかもしれない介護に備えて、本人の希望を聞いておくことは、家族にとっても大切なこと。しかし、具体的に何を聞いておけば良いのか、イメージできますか?
「死ぬまで自宅で過ごしたい」
「家族に迷惑をかけたくないので、施設で暮らしたい」
こういった情報もたしかに大切。ですが、実際の介護のシーンではもっと様々な情報が必要になるようです。今回は、“エンディングノート”における介護に関する記載をもとに、押さえておきたい情報について、ご紹介します。
まずは介護の大方針をはっきりさせましょう!
大方針とは、「どこで」「だれに」「どうやって」頼るのか?具体的な項目は、下記のような形です。
<どこで>
・自宅
・介護施設(小規模な施設、大規模な施設、特養、有料老人ホーム等…)
<だれに>
・家族
・介護のプロ
<どうやって(介護資金)>
・介護資金は特別用意していない
・これまでの預貯金を使う
・加入している保険を使う
・その他
より具体的に言うと、
「自宅で長男家族と同居を続けたいが、可能な限りヘルパーさんのサポートを受けたい」
「介護施設に入居したい。その費用捻出のために自宅を売却してほしい」
といった内容です。特に押さえておきたいのは、「どうやって」。つまり、実現するための費用の問題をどうクリアにするかです。どんなに希望を書き連ねても、実現性が低ければただの夢物語になってしまいます。保険の有無や預貯金に関する情報も踏まえておくことは必須。また、子ども世代にとっては、親の希望を事前に知ることで、将来に備えて「介護用の積み立て貯金」をはじめたり、「二世帯住宅」を検討するきっかけにもなります。
病名の告知、胃ろう、延命治療の希望も忘れずに!
介護のはじまりや終末期における本人の希望も、押さえておきたいポイント。
・余命や病名は告知を希望するか
・痛みや苦痛を緩和する週末医療はどうするか
・延命治療としての胃ろうを希望するか
・臓器提供や献体を希望するか
このような内容は、本人の意志を抜きに、家族の判断だけで決めるのはとても難しいことです。デリケートな話ではありますが、介護が必要になる前にできるだけ聞いておきましょう。
“介護リーダー”を決めておきましょう。
介護に関わらず、エンディングノートにおいて大切とされている事項があります。それは、「誰に判断を委ねるか」です。例えば、上記のような重大疾患の告知や、延命治療についてなど、念入りに準備したつもりでも、記載のない事柄が起きてしまうことは十分に考えられます。介護には正解のない選択を迫られることが多いですから、仲の良いきょうだいで意見が割れてしまうという場合もあるでしょう。だからこそ、誰の意見を尊重するか決めておくことが重要。事前に“介護リーダー”を任命しておき、家族全員がその事実を知っていることが大切です。
好きなことや趣味なども介護のヒントになります。
認知症になった場合でも、本人の嗜好性はさほど変わりません。(日記を書くなど、連続性のある記憶と関わりの深い事柄は除きます)みんなが楽しく介護生活を送っていくためにも、介護者の好きな食べ物、テレビ番組、趣味などを把握しておくことも大切です。「親の好きなものくらい分かる」と思われるかもしれませんが、長く離れて暮らす場合など、親の日常のことを知らないという人も意外と多いのではないでしょうか。また、介護士さんやヘルパーさんへの申し送りにも役立つ情報ですので、メモしておきましょう。
その他、認知症の方にとっては「昔のこと」なども大切なコミュニケーション手段です。“自分史”にまとめておくことで、一見脈絡のない話が出てきても驚かずに対応しやすくなります。介護が“必要になった瞬間”だけでなく、“介護とつきあっていく人生”をイメージしながら、今のうちから必要な情報を聞いておくことをオススメします。

森田 大理

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