タッチセラピーをご存知でしょうか?タッチセラピーとは、言葉の通り触れる療法です。認知症の人によく見られる、不安や焦り、抗鬱、攻撃的言動、不眠といった周辺症状を抑えたり、和らげたりできるといわれています。私は、介護職員として働きながら、タッチセラピーも学んでいます。今回は、介護の現場で行うタッチセラピーについて、お話したいと思います。
前回の記事:排泄介助を「苦手だなぁ」と思っている人へ~うんちを◯◯に例えたら、お年寄りが笑った~
目次
「こんにちは」のついでに。ほんの数秒で癒やしを産むタッチセラピー
タッチセラピーは、大きく言うと代替え療法、非言語的コミュニケーションと言ったところでしょうか。触れる療法は様々あります。思い浮かぶのは、幼い頃に痛いと思って「痛いの痛いの飛んでいけー」と言う光景や自分がされた験はないでしょうか。私が伝えるタッチセラピーとは、相手の立場に立ち、その人の生活状況を崩さず自然な流れで行うタッチセラピーを指しています。
例を出すとこんな感じでしょうか。
話しながら数秒、数分間のちょっとした時間。「こんにちは」、「大丈夫ですか」などの会話中に寄り添いながら触れる。タッチセラピーは、むやみやたらに触れるわけではありません。心を癒し、タッチングによる温熱療法を加えることで、身体面での血行促進や身体面では心のケアを同時に行う療法なのです。
嫌なのに我慢して「リハビリ」するお年寄り。それは本当に「リハビリ」ですか?
タッチセラピーとは、心と体の緩和療法です。体だけをリハビリしても相手の気持ちに寄り添い相手が何を求めているのか、相手の気持ちに寄り添いながら行わないと、リハビリの効果は半減どころかマイナス効果になってしまうのです。
理論的な構造のリハビリは、お年寄りにとって本当のリハビリなのでしょうか。身体同様、心の声にも向き合う必要性が重要とされている現実です。リハビリを積極的にされるお年寄りは、ごく一部だと感じています。大半は「リハビリ」と聞くと、嫌がるお年寄り。嫌なのに嫌と言えず、ストレスを感じ、苦痛の表情を浮かべながら施術を受けている人。リハビリを終えると去っていく先生を見ながら悲しそうな表情。特養という介護施設の中で生活の一部としてのリハビリは強制して行われるべきなのか疑問を感じます。
普段介護している人が“タッチ”した時の効果は絶大
日ごろから関わっている介護現場のスタッフに触れられるのと、週に何度かたった30分ほどの時間を過ごす相手から触られること。比較した時に、お年寄りが「心地よい」と思いやすいのは断然、現場のスタッフです。そこで、日ごろから関わっている介護現場のスタッフによるタッチセラピーの導入をお勧めしています。すでに信頼関係が成り立っている状況であれば、想像以上の効果が期待できます。相手の心理状況、ADL状況を総合し、心と体を癒していきます。
堅苦しい話ですが、砕けていうと「機械的な扱いはいらない、きちんと向き合って寄り添って自分を見てほしい。」これがお年寄りの心の声なのです。
誰でも出来るタッチセラピーのやり方
タッチセラピーの具体的な方法は、「タッチセラピー 動画」と検索すると、たくさんの動画がヒットすると思います。
ただ、セラピーを行う上での一番大事なのは、どんな動きでマッサージするのかではなく、どうマッサージするかです。具体的には、次のようなポイントです。
1.両手でやわらかく包むようにゆっくりと触れる
タッチセラピーは指圧やツボ押しではありません。強い力で触るのではなく、マッサージだったら物足りないくらい優しく触れることが大切です。
2.いったん手を添えたら終了まで手を離さない
手は相手の身体に密着させ、手を持ち替える場合も片手ずつ持ち替えて、常にどちらかの手が相手の身体に触れているように気をつけます。マッサージの動き自体はゆっくりですが、途中で中断しないように注意します。
こうした方法で、タッチセラピーを受ける人がゆったりと穏やかな気分を保つことができます。

タッチセラピーの効果
タッチセラピーを施術した後には、色々な変化が見られます。例えば、次のようなことです。
- 感情表現が豊かになった
- イライラが軽減
- 便秘が改善された
- 奇声を上げたり叩くなどの行為が減少した
- 自分からセラピーを要求するようになった
- 不眠傾向にあった方が寝つきがよくなった
- 開始後「痛いのましになってきた」「楽になったわ」と言われる
- 痛くて歩けないと言っていた人が自分から歩行されるようになった
- むくみが軽減し血行が良くなった
- 施行セラピー部位以外の痛みの緩和
- 痛みの軽減(回数を重ねることにセラピー時間が短くても効果あり)
- 麻痺していた部分に感覚が出てきた
などなど。
もちろん、どの療法でもそうですが、タッチセラピーもオールマイティーではないので、これさえしておけばOK、ということではないですし、一番大事なのは普段の関わりです。
ただ、普段の関わりが良好な介護者がタッチセラピーを行うことで、私たちが思っている以上の効果をもたらしてくれる場合があります。介護の現場で上手に取り入れていけると良いですね。

なっちゃん

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