認知症の人の老後の生活と資産を守る「成年後見制度」とは?

【アイキャッチ】成年後見人

認知症の高齢者を狙った悪質な詐欺事件が多いことをご存知ですか?認知症につけ込まれ、高額な布団を売りつけられたり、不要なリフォームを割高で契約させられたりといった被害は後を絶ちません。認知症などで判断能力が不十分になってしまった人を支える仕組みの一つとして成年後見制度があります。この成年後見制度をうまく利用することで、認知症の高齢者を狙った悪質な詐欺などを未然に防ぐことができます。今回は、成年後見制度の基本的な概要について解説します。

詐欺被害にあっているお年寄り

成年後見人とは

成年後見制度とは、「後見」という字が示すように、判断能力が不十分になってしまった人について「うしろだてとなって陰で支える」制度です。成年後見制度は、利用の開始時期によって任意後見制度(判断能力が不十分になる前)と法定後見制度(判断能力が不十分になった後)の2種類に分けられます。

任意後見制度 法定後見制度
開始時期 判断能力が不十分になる前 判断能力が不十分になった後
支援する人 話し合いで自由に決定 家庭裁判所が決定
権利の有無 同意権・取消権なし(※) 同意権・取消権あり(※)
判断能力区分 区分はなく個々のケースに応じた契約が可能 「後見」「保佐」「補助」のいずれかに区分
(※)
【同意権】本人の行為に保佐人・補助人が同意の意思を示すことができる権利。成年後見人には同意権はない。※同意を得ずに行った契約などの法律行為は取り消すことができる。
【取消権】本人が行った契約などの法律行為を成年後見人が取り消すことができる権利 ※生活用品の購入等、日常行為の取り消すことができない。
★前提として、後見人の種類によって同意権・取消権の範囲が異なります。

任意後見制度とは

任意後見制度とは、本人の判断能力が不十分になる前に、将来を見据えて事前に公証役場で任意後見契約(生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を委任します)を結び、本人が認知症などで判断能力が不十分になった時に家庭裁判所に申し立てをし(任意後見監督人の選任をしてもらいます)、任意後見監督人のチェックを受けながら、本人に代わって、任意後見人が委任された後見事務を行う制度です。

任意後見契約は、どのような人を任意後見人にするか(親族なのか、弁護士などの法律の専門家なのか)、どのような範囲の後見事務を委任するかを話し合いで自由に決めることができますが、②法定後見制度と異なり、同意権や取消権を与えることはできません。よって、任意後見人の知らないところで、本人が自分の不利益になるような契約を締結しても、それが明らかに詐欺であるなど契約自体に問題がある場合でないと取り消すことができません。

任意後見制度の流れ

〇今は大丈夫だが、認知症になった時に自分のことができなくなるのが心配。
↓ ※任意後見契約について検討する。
〇任意後見契約の締結(①任意後見人を選ぶ、②委任する後見事務の内容を決める)
↓ ※公証役場で公正証書作成。東京法務局に登記される。
〇本人に認知症の兆候が出てきた
↓ ※任意後見契約を発効させる必要あり。
〇家庭裁判所に申し立てをする。
↓ ※任意後見監督人が選任される。
〇任意後見人が委任された後見事務を本人に代わって行う。
  ※任意後見監督人が任意後見人の仕事をチェックする。

法定後見制度とは

法定後見制度とは、本人の判断能力が不十分になった後に、本人の判断能力の程度に基づいて、次の3つうちのいずれか(㋐後見、㋑保佐、㋒補助)の開始を家庭裁判所に申し立て(後見人等を選任してもらいます。)、選任された後見人等が、本人に代わって財産管理や身上監護等を行う制度です。

法定後見制度の流れ(㋐後見の場合)

〇認知症で判断能力が衰えてきた。
↓ ※法定後見制度の利用について検討する。
〇家庭裁判所に後見開始の審判の申し立てをする。
↓ ※申立人、後見候補者との面接、医師の鑑定、親族への照会などが行われる。
〇後見開始の審判がなされる(後見人が選任される)。
↓ ※必要があれば後見監督人が選任される。後見登記がなされる。
〇後見人が本人の財産管理や身上監護等の任務を行う。

法定後見制度では、同意権・取消権をうまく使っていくことが考えられます。㋐後見、㋑保佐、㋒補助のいずれかによって、同意権・取消権の与えられ方が異なりますが、この同意権・取消権は、認知症になって判断能力が不十分になってしまった人にとっては心強いものといえます。認知症の方の特色として、家族の知らないところで本人が無用な買い物を繰り返したり、うまく言いくるめられて本人の不利益になるような契約を締結したりすることがあります。家族としては本当に困ってしまいます。

そのような場合に、この同意権・取消権は使い方次第では、非常に有益なのです。例えば、本人が不要なリフォーム契約を勝手に結んでしまわないために「新築、改築、増築、または大修繕」をする行為について同意権・取消権が後見人(保佐人、補助人)に与えられていれば、後見人(保佐人、補助人)は本人が相談なく勝手にリフォーム契約を業者と結んでしまった場合には即座にその契約を取り消すことができるというわけです。

次の回では、㋐後見、㋑保佐、㋒補助の違いと、その利用のしかたについて、事例とともに詳しく説明します。

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芳賀 由紀子

芳賀 由紀子

弁護士。大学卒業後JRに入社。法務室に配属され自分のアドバイスで人が笑顔になることに喜びを感じ,一念発起して弁護士を目指す。法科大学院在学中は特待生として授業料免除を受け,その後司法試験に合格。弁護士になってすぐに経験した遺産分割事件で,親族間の凄まじい紛争を目の当たりにし,相続問題に関心を持つようになる。日々の業務の中で多数の相続案件を取り扱うとともに、「ベスト・クロージング」(有限責任事業組合)において、分野の異なるスペシャリストと共に相続&終活のサポートを行う。NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク所属。著書に「遺言書作成のための適正な遺産分割の考え方・やり方」(同文舘出版)。その他、共著多数

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