認知症の排泄ケアについて、2回に渡ってお届けしています。
前回は、「心のケア編」として、本人の気持ちを傷つけない声がけや配慮をお伝えしました。(【どうする親のトイレ問題】認知症の排泄介助のコツ~心のケア編~)今回は、実際に排泄介助する時に使える介護テクニックをご紹介します!
おむつの前にできる失禁対策とは?
認知症の症状が進むと、失禁をしてしまうことが増えてきます。ただ、すぐにおむつに切り替えるのはおすすめしません。最近のおむつは性能が良く、吸水量も多いものが販売されています。その結果、おしっこが出たという感覚すら奪ってしまうことにも繋がります。残された感覚があるのであれば、いきなりおむつを使用するのではなく、まずはトイレへの誘導を心がけからはじめるといいでしょう。
すぐ出来るのは、本人がトイレにいく時間を数日間記録し、排泄パターンを知ること。特に食前・食後のタイミングでトイレに誘います。また、そわそわと落着きがないと思ったらトイレだった、ということもあるので、様子をきちんと観察することも重要です。
トイレの場所を分かりやすくする
認知症の場合、トイレに行きたい気持ちがあってもトイレの場所が分からず、間に合わないということがあります。特に、介護施設の場合、ドアや廊下のデザインが同じようなことが多く覚えにくいのです。そうした場合、下記の方法が有効です。
- トイレのドアに大きく男女の絵を描いて貼る
- 廊下に大きな字で「トイレ」と矢印と一緒に書いて貼る
- 夜間だけベッドサイドにポータブルトイレを置く
- 夜間は廊下に足元灯を付ける
貼り紙はすぐに出来ますし、今は足元灯が100円均一ショップに売っていたりするので、探してみてもいいと思います。
便を弄んでしまう「ろう便」が出たら・・・
排泄した便をもてあそんでしまう行為は、認知症の症状のひとつで「ろう便」と呼ばれます。便が出たことが分からずに、パンツの中が何となく気持ち悪くて触ってしまいます。対処法として一番いいのは、手を触ってしまう前にトイレに連れて行くことです。ただ、高齢者は便秘しやすく、排便パターンの把握が難しいことも多いのが実情です。運動や食事で気を付けてもなかなか規則的な排便が得られない場合は、かかりつけ医に相談して整腸剤や下剤を処方してもらい、上手く利用するのも手です。下剤はそれぞれ、効果が現れる時間が大体決まっているので、時間を見てトイレに連れて行くと失禁せずに排便出来るようになってきます。また、どうしてもろう便が防げない時の最終手段として、つなぎの服や、手にミトンなどをはめてもらうことで、おむつを外しにくくする、という方法もあります。(これは一種の身体拘束に当たるため、よほどのことがない限り施設では用いられない方法です。導入する場合は、ご家族の了承を得て行うことが必須でした。)
さいごに
介護をする上でも、排泄用具を選ぶ場合でも、出来るかぎり本人の自立を助け、プライドを守る配慮が必要となります。トイレで自立して排泄をすることができるのがベストですが、是が非でもトイレで・・・ということでは、本人や介護者にとって排泄行為自体が負担になり、逆効果の場合もあります。また、失禁の中には、治療で治るものや治療が必要な場合もあります。環境整備や用具の活用、治療の可能性等の様々な要因を十分に考慮していく必要がありますね。

佐藤 瑞紀

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