意外と知らない!「エンディングノート」と「遺言書」の違い

by 森田 大理森田 大理 1419views

認知症は決して他人事ではない、いつ誰でも向き合う可能性のあること。もしもの時に備えるためにも、「エンディングノート」をぜひご活用いただきたいというのは、前回の記事(“もしも”の時に備えよう。「エンディングノート」のススメ)にてお伝えした通りです。では、実際にエンディングノートの特徴について、みなさんはどれくらいご存知でしょうか?この話題になると良くお伺いするのが、「エンディングノートって遺言書の簡易版でしょ?」というご意見。それは決して間違いではないですが、似て非なるものというのが私自身の見解です。今回は、よく一緒に語られがちな「遺言書」と「エンディングノート」を比較することで、その特徴について解説していきます。

遺言書とエンディングノートの違い表

法的な効力を求めるなら遺言書。手軽にはじめるならエンディングノート。

上の図は、「遺言書」と「エンディングノート」をいくつかの側面で比較したものです。このように、それぞれにメリットとデメリットがありますので、ご自身の状況・希望にあわせて上手く活用していきましょう。
(遺言書は、厳密にはいくつかの種類があり、内容によっては必ずしも上記に当てはまらない場合があります。ここでは最も確実性が高いと言われている「公正証書遺言」を比較対象としています)

「法的拘束力」は遺言書の特権

遺言書には、法律で定められたルールがあり、それに則って作成されたものである限り、相続人はその内容に原則従う必要があります。対して、エンディングノートの場合は、極端な話「財産は全て長女へ」というような内容を記していたとしても、相続人はその内容に従う必要はありません。争いが起こらないように、正しく分配するためにという目的であれば遺言書の作成を行うことが、最も効果的。土地や家屋などの不動産は例え少額でも争いの火種になりやすいため、お持ちの場合は遺言書の作成を検討されることをお勧めします。

「手軽に、安く」実現できるエンディングノート

手軽さと費用の側面で比較すると、エンディングノートに軍配が上がります。書店や文具店などで市販されているものなら、お手頃なもので1000円前後。企業や団体が主催する終活・相続関連の無料セミナーに参加すると、オリジナルのエンディングノートを配布されているところもありますし、エンディングノートのテンプレートをダウンロードできるサイトもあります。自宅にいながら空いた時間で書き進められるのも良いところです。遺言書の場合は、弁護士さんや司法書士さんに作成をお願いすることが一般的。財産の額にもよりますが、数万円単位で費用が発生しますので、必要とは分かっていても二の足を踏む人も多いのではないでしょうか。こういった意味で、エンディングノートは「手軽にはじめられる敷居の低さ」も特徴の一つに挙げられています。

「秘匿性」は、管理方法次第

どちらも最終的には家族に公開するためのものですが、資産や個人的な想いなど、重大な個人情報をまとめたものですので、「適切なタイミングで」「適切な人に」届けたいですよね。この意味ではエンディングノートがやや不利。保管方法などが特に決まっていないので、見られたくはない人にみつかってしまったり、プライバシーを気にしすぎてその存在を誰にも気づかれないという結果も招きかねません。書いて終わりではなく、その存在の知らせ方やタイミングについて、ご自身で計画し、準備する必要があります。

お金の話だけじゃない!体裁「自由」のエンディングノート

相続などのお金の話が主となる遺言書に対して、エンディングノートに書く内容は自由。「介護のこと」、「葬儀の方法」、「自分史」、「残された人へのメッセージ」など、テーマは何でもあり。想い出の家族写真を貼ったり、家系図を記したり、家族がなかなか知る機会のなかった仕事の内容をまとめたりしている人もいます。ただし、お金のことをエンディングノートだけで解決するのは、後々家族間で揉めてしまう原因になりかねないので、おすすめしません。

もし、最初は「どう書いていいのか分からない」と迷われるようであれば、まずは下記のような自由記述欄が少なく、予めテンプレートが整ったノートを使ってみることをお勧めします。


認知症と「付き合う」「生きていく」ためのエンディングノート

ここまでご説明して、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、「遺言書」と「エンディングノート」は、多くの場合「故人と遺族をつなぐもの」として比較されます。しかし、エンディングノートは、「亡くなった後のことだけではなく、もしもの時が起きた時に読んでもらうもの」という考え方である点で、遺言書とは大きく異なります。認知症などで介護が必要になった時、突然の事故で意思疎通が出来なくなってしまった時なども想定して書くものなのです。
元気な今と過去をみつめて、「もしもの時」を想定し、「その先の未来」についても希望を記す。認知症が誰にでも起こりうるものであるからこそ、その後の人生をより良く生きていくための「手引き書」として家族にお渡しできれば、認知症と向き合う人たちの心の道しるべになるのではないでしょうか。

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森田 大理

森田 大理

大学卒業後、大手情報サービス企業の人材採用事業にて求人広告の制作ディレクターに従事。その後、事業会社の広報・PRを経験し、2013年にコピーライターとして独立。広告の企画・制作や、人の働き方・生き方に焦点を当てた記事の執筆を手掛ける。また、コピーライターとしての活動と並行して、その人らしい人生の歩みを伝える手段である「エンディングノート」を普及推進すべく活動中。
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