認知症の人が同じことを何度も言うのはなぜ?理由を探る認知症ケアVol.2

【アイキャッチ】理由を探る認知症ケア02

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【何度も言わせているのはこっち?!】

認知症とか関係なく
何度も同じことをいう人はいるもの。

もしかするとその人は
「自分が言ったことを受け取ってもらえた」
という感覚がないのかも。

だとしたら
「また同じことを話してるよ~」と
相手が言っていることを
受け取らずにいるわたしたちの態度が
繰り返しを助長してるのかも?

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「同じことを何度も言う」も千差万別

 「同じことを何度も言うんです」と耳にすることがありますが、大きく分けると3つに分類できるのではないかと思います。

①同じ質問(確認)を繰り返す
例)「ご飯はまだ?」「わたしは何をしたらいいの?」など
②同じ訴えを繰り返す
例)「トイレに連れて行ってください」「あの人が財布を盗った」など
③同じ話題の話を繰り返す
例)昔やっていた仕事の話や、楽しかった思い出話、など

「認知症」に起因していると思ってみても…

 認知症があると、記憶力や理解力が低下します。だから、同じ質問を繰り返されると、わたしたちはついつい「さっき答えた(説明した)ことを忘れているんだ」ととらえます。「トイレに連れて行ってください」と言われると「さっき行ったことを忘れているんだ」ととらえ、昔話を繰り返しされていると「この前も話したことを忘れているんだ」ととらえたりもします。
 
 それが認知症に起因することだとアタマでは理解していても、何度も繰り返されると、新鮮に、優しく聴くことは、だんだんと難しくなってくるものです。

認知症じゃなくても、同じことを何度も言う人はいます

 でも、皆さん、よくよく考えてみてください。同じことを何度も言う人は、身近にいませんか? あるいは自分自身がそうする場面はありませんか?

 「質問や確認を繰り返す」「訴えを繰り返す」「同じ話を繰り返す」というのは、特別なことではなく、実は日常にあふれているのです。では、どういう時に、人はそうなるのでしょうか?

腕を組む人

「同じ質問(確認)を繰り返す」のはどんな時?

 「それ本当?」「それ納得できないな」そんな思いがある時って、同じ質問を繰り返しませんか? 仕事を辞めるというスタッフの理由が信じられないとか、上司の指示に納得できないとか、そういう場面では、まるで「違う答え(こちらが望んでいる答え)を言ってくれ」と言わんばかりに、何度も同じ質問を繰り返すことがあるでしょう。他にも、自分が安心するために、あるいはミスを犯さないために、何度も同じ確認を行うという場合もあるのではないでしょうか。

「同じ訴えを繰り返す」のはどんな時?

 自分の訴えに耳を傾けてもらえたと感じられない時にも、同じ訴えを繰り返しませんか? 相手の人が聴いてくれた感じがしない、あるいはまともに取り合ってくれているように感じられないという場合にも、起きうることだと思うのです。

 例えば、「トイレに連れて行って」という訴えがある人で、連れて行っても排泄が見られないケースなどは、もしかすると、求めているものは「トイレ」そのものではなく、トイレに連れて行ってくれるスタッフとのやりとり(関わり)自体を求めているという見方もできるのです。「誰かと関わっていたい」「誰かに必要とされたい」そんな思いが、同じ訴えの繰り返しとして現れることもあります。

「同じ話題の話を繰り返す」のはどんな時?

 
 こちらも、関わり自体を求めて現れることもありますが、実は、もう一つ違った見方もできます。わたしは一人暮らしをしていた頃、実家に帰ると母親が毎回同じ話をしてきました。最初の頃は「その話、前も聞いたよ」と答えていましたが、ある時、ふと思ったのです。「母は息子と交わせる話題を探しだして話しているのではないか?」と。

 それ以来、利用者が同じ話題で話をしてくるのは、こちらに気を遣って、共通の話題として適当と思われる話を考えて、話してくれているのではないか?と思えるようになりました。

 他にも、わたしの場合は、「ものすごく面白かった笑い話」などは、わかっていても何度も同じ人に話すこともあります。

「相手に言わせているのかもしれない」という観点

口元
 今回、わたしが皆さんの心に留めてほしいと思うことは、「もしかすると、自分が相手に同じことを言わせているのかもしれない」という観点です。自分の反応、心の動き、向き合ったときの自分の表情、かける言葉、聴く姿勢・・・何かがきっかけになったり、助長しているかもしれないと考えてみると、関わりに違いを作るポイントが見つかるかもしれないからです。
 
 「同じことを何度も言う」にも、いろいろなパターンや背景があると考えられます。同じことを何度も言うことが異常なわけでもないし、わたしたちを困らせようという悪意から繰り返されるというよりも、本人の希望や困惑など、何かしらの自分の状況を伝えようとしている表現だと見る方が適切だと思います。そして、認知症による「もの忘れ」や「理解力の低下」は、背景の一つとしてあったとしても、すべてではないという見方を、他の場面でも大切にしてほしいと思います。

第一回:【プロが教える】認知症の人とのコミュニケーションがうまくいく2つのステップ

★著書のご紹介

“理由を探る”認知症ケア――関わり方が180度変わる本
◆著者:裵 鎬洙(ペ ホス)
◆単行本:246ページ
◆出版社:メディカル・パブリケーションズ
◆内容(「BOOK」データベースより):
観点を増やし、発想を広げ、コミュニケーションのセンスを磨く。認知症ケアが行き詰まるワケとその打開策を徹底解説。次世代認知症ケアのアプローチ!


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裵 鎬洙
コーチ 認知症ケアスーパーバイザー コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)講師 介護支援専門員実務研修・専門研修講師 【略歴】 1973年生まれ。兵庫県在住。大学卒業後、訪問入浴サービスを手がける民間会社に入社。その後は介護施設で相談業務に従事。コミュニケーショントレーニングネットワーク(CTN)にてコーチングやコミュニケーションの各種トレーニングに参加し、関わる人の内面の「あり方」が ”人”や”場”に与える影響の大きさを実感。介護に携わる様々な立場の人に、知識や技術だけでなく「あり方」の⼤切さを発見する研修やコーチングセッションを提供。著書『理由を探る認知症ケア~関わり方が180度変わる本~』。介護福祉士、介護支援専門員、主任介護支援専門員。
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