アリセプト(一般名:ドネペジル塩酸塩 ※以下アリセプト)は、1999年10月の発売以来、日本における唯一の認知症治療薬として使われてきました。アルツハイマー病やレビー小体型認知症になると、記憶や思考に関わるアセチルコリンという神経伝達物質が不足します。アリセプトは、このアセチルコリンの分解を抑え、神経活動を高める働きをします。
アリセプトの概要
商品名 | アリセプト |
発売日 | 1999年11月 |
一般名 | ドネペジル塩酸塩 |
剤形 | フィルムコート錠、D錠(口腔内崩壊錠)、細粒、内服ゼリー、ドライシロップ剤 |
投与回数 | 1日1回 |
維持容量 | 1日5mg、高度は1日10mg |
開発会社 | エーザイ |
販売会社 | エーザイ |
アリセプトの服用方法
アリセプトは、1日1回3mgから服用を開始します。3mgという用量は、副作用を起こさないために定められた暫定的な用量です。服用をはじめて特に大きな問題がない場合、2週間を目安に、1日5mgに増量し、維持します。病状が進行して1日5mgでは足りない場合、5mgで4週間以上経過していれば10mgまで増量することが可能です。
アリセプトの剤形
アリセプトの剤形は元々は錠剤のみでしたが、現在では多種多様で、本人の状態に併せて選ぶことができます。
剤形 | 特徴 |
---|---|
フィルムコート錠 | 一般的な錠剤。表面が膜で覆われているので苦みを感じず飲み込みやすいのが特徴 |
OD錠(口腔内崩壊錠) | 見た目は錠剤。少量の唾液で溶ける加工がされている |
細粒剤 | 粉薬が飛び散らないように細かい粒状に加工されており、量を細かく調整することが可能 |
内服ゼリー | ゼリー状なので、嚥下機能があるためにむせやすい人にも飲み込みやすい |
ドライシロップ剤 | 細粒または顆粒の剤形。直接飲む事も水に溶かして飲む事も可能。また、少量の水に溶いてペースト状にして上あご等口の中に塗りつけた後に水を飲んで服用する事も可能。 |
薬の量についても、1錠あたりで3mg、5mg、10mと3種類あります。ご本人に服薬を拒否される場合、薬の形状や量を変えて再度挑戦してみるとうまくいくというケースもあるようです。
アリセプトの効果・効用・作用機序
アリセプトの働きで得られる効果・効用は次の通りです。
記憶障害、判断力低下等の中核症状を食い止める
アルツハイマー型認知症になると、脳内の記憶や学習の働きをつかさどるアセチルコリンという神経物質が減少することで、病気が進行します。アリセプトは、アセチルコリンの分解を食い止める働きをし、脳内のアセチルコリン量を一定に保ちます。結果、認知症の中核症状と言われる記憶障害や判断力の低下といった認知機能障害の進行を遅らせることができます。薬の効果が現れるまでには個人差はありますが、おおむね約3ヵ月(12週程度)といわれています。
無気力やうつ状態等の周辺症状への効果も
アリセプトは、神経を昂ぶらせる興奮系の薬剤でもあります。無気力、無関心、独語、無言、うつ状態といった周辺症状がある場合に服用すると、活動的になったり明るくなるといった改善効果が期待できます。しかし、その反面、元々怒りっぽい症状のある場合には、アリセプトを服用すると、約20%の確率で暴力的になったり徘徊、転倒といった症状悪化を招くことがあります。
診断されたら、なるべく早めの服用を
アリセプトは、認知症治療薬の中で、唯一、軽度から高度まですべてのステージのアルツハイマー型認知症の人に使用することが可能です。また、認知症予備軍と言われるMCI(軽度認知障害)の人に対しても、進行を送らせて発病を予防するのに有効です。認知症と診断されたら、なるべく早く服用を開始すると良いでしょう。
アリセプトの副作用
アリセプトは、アセチルコリンの分解酵素の働きを阻害するので、副作用は脳以外のアセチルコリンが作用している消化器官、心臓、泌尿器気に出やすい傾向にあります。特に、飲み始めの時期や薬を増量した時期に起こりやすいので、その時期には注意深く体調変化に注意しましょう。
消化器官の不快症状
食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛、便秘など
怒りっぽくなる
興奮、不眠、徘徊、暴力、といった神経が高ぶった精神状態
頻尿、失禁
頻繁に尿意を催す頻尿、尿失禁など
心拍、脈の乱れ
心拍数が低下する徐脈、不整脈、失神、動機、心拍が途絶える心ブロック、ふらつき、めまい
パーキンソン病のような症状
振戦(手や足のふるえ)、無動(動きが鈍くなる)、固縮(筋肉がこわばる)、姿勢反射障害(体のバランスがとりにくくなる)など
※特にレビー小体型認知症の場合に起こりやすい
上記のような副作用がでてきたら、薬の量を調整するか、症状を落ち着かせるための別の薬剤を処方してもらう等、医師に相談して対応することが大切です。
アリセプトのジェネリック(後発)医薬品の種類
アリセプトの日本発売から12年が経過した2011年11月、国内の特許期限が終了したことに伴い、各社から「ドネペジル塩酸塩」の名称でジェネリック(後発)医薬品が登場しました。ジェネリックとは、「後発医薬品」とも呼ばれ、開発会社の特許が切れた薬剤を同じ成分で作った薬剤です。
ジェネリック(後発)医薬品の場合、開発費がかかっていない分、価格が安くなります。アリセプトのジェネリック医薬品は、各社共に7割程度の価格です。種類や薬価については、下記をご参照ください。
アリセプトとジェネリックの薬価比較
種類 | アリセプト | ジェネリック |
---|---|---|
細粒0.5% | 337.1円 | 236円 |
3mg錠 | 238.5円 | 167円 |
5mg錠 | 356円 | 249.2円 |
10mg錠 | 636円 | なし |
3mg内用液 | なし | 149.8円 |
5mg内用液 | なし | 223.5円 |
3mgD錠(口腔内崩壊錠) | 238.5円 | 167円 |
5mgD錠(口腔内崩壊錠) | 356円 | 249.2円 |
10mgD錠(口腔内崩壊錠) | 636円 | なし |
3mg内服ゼリー | 233.4円 | 163.4円 |
5mg内服ゼリー | 356円 | 249.2円 |
10mg内服ゼリー | 636円 | なし |
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